2024 年 73 巻 4 号 p. 858-860
[背景]腰椎後方椎体間固定術(PLIF:Posterior Lumber Interbody Fusion)の術後合併症として比較的稀な症候性近位型深部静脈血栓症を認めた症例を経験したので報告する.[症例]71歳女性.来院4ヶ月前からの両臀部から大腿後面,下腿後面の痛みを主訴に受診した.MRI検査でL3/4高位の中等度狭窄,L4/5高位の高度狭窄を認め,L3/4の椎弓切除及びL4/5 PLIFを施行した.術後10日目に誘因なく左下肢全体の疼痛を自覚し,その後左下腿浮腫が出現した.造影CT検査で左総腸骨静脈に血栓を認め,抗凝固薬で治療を開始した.次第に症状は軽快し,術後53日目に自宅退院した.[考察]解剖学的に左総腸骨静脈は前方の右総腸骨動脈と後方の腰椎に挟まれて血栓形成し易い部位とされ,May-Thurner Syndrome(MTS)として知られている.本症例ではMTSを背景に,手術操作の影響も考えられた.L4/5高位の脊椎手術後管理においては本病態を念頭に置くことが重要である.