抄録
消化器癌のケモプリベンション(化学予防)として現状では大腸癌でCOX-2阻害剤,肝癌でインターフェロン,胃癌でHelicobacter pylori除菌が臨床の場に登場し検証が進められている.新たな化学予防の試みとしては大腸癌に対するPPARを標的とした治療や,肝癌に対する非環式レチノイドが検討されており,基礎的なレベルでも多くの有望な化合物が見い出されている.今後,無作為化比較試験による実証が待たれるが,そのためには多大な労カを必要とする.日本で多く見られる疾患に於いて,対象を発癌リスクの高い患者に絞り,発癌の代理指標を用いることで臨床試験の早期遂行が可能となり,エビデンスの高い知見が得られると期待される.