日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
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100 巻, 1 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • 檀 直彰, 渡辺 守, 北島 政樹
    2003 年 100 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2003/01/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    消化器癌のケモプリベンション(化学予防)として現状では大腸癌でCOX-2阻害剤,肝癌でインターフェロン,胃癌でHelicobacter pylori除菌が臨床の場に登場し検証が進められている.新たな化学予防の試みとしては大腸癌に対するPPARを標的とした治療や,肝癌に対する非環式レチノイドが検討されており,基礎的なレベルでも多くの有望な化合物が見い出されている.今後,無作為化比較試験による実証が待たれるが,そのためには多大な労カを必要とする.日本で多く見られる疾患に於いて,対象を発癌リスクの高い患者に絞り,発癌の代理指標を用いることで臨床試験の早期遂行が可能となり,エビデンスの高い知見が得られると期待される.
  • 松本 誉之, 押谷 伸英, 荒川 哲男
    2003 年 100 巻 1 号 p. 6-12
    発行日: 2003/01/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    クローン病は,栄養療法を中心として治療されていたが,TNF-αを分子標的とした抗体(Infliximab)による治療が本邦でも認可された.適応は,従来の治療に抵抗するクローン病であり,活動期に対しては5mg/kgの単回投与が,外瘻を有する症例に対しては,0,2,6週の3回投与が認められている.活動期例に対しては81%,外瘻に対しては68%と高い有効率が得られている.副作用としては,感染症があり,時に重篤化するのでX線や血液検査を行う.そのほかにinfusion reactionに注意が必要である.悪性腫瘍の発生率については,特に有意差がないと報告されているが,なお長期の観察が必要である.
  • 廣田 誠一
    2003 年 100 巻 1 号 p. 13-20
    発行日: 2003/01/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    Gastrointestinal stromal tumor(GIST)が高頻度にc-kit遺伝子の機能獲得性突然変異を持つことは,GISTの発生・進展にc-kit遺伝子が関与していることを示し,c-kit遺伝子産物(KITレセプター)などのいくつかの分子マーカーがGISTとカハールの介在細胞(Interstitiai cells of Cajal;ICCs)に共通して発現していることは,GISTがICCs由来の腫瘍である可能性を示している.germ-lineにc-kit遺伝子の機能獲得性突然変異を持つ家系の患者にICCsの過形成を基盤とした多発性GISTがみられる事実は,2つの可能性を裏付けている,また,KITレセプター活性阻害薬がc-kit遺伝子変異を持つGIST患者に有効であることが明らかになりつつあり,この事実も前者の可能性を支持している.
  • 花井 洋行, 戸澤 孝太郎, 竹内 健, 飯田 貴之, 荒井 肇, 金岡 繁, 杉本 健, 吉田 賢一, 岩崎 央彦, 中村 明子, 細田 ...
    2003 年 100 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 2003/01/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎(UC)患者の便中calprotectin値とMatts分類などとの関連および,顆粒球・単球除去療法(GMCAP)による変化について検討した.その結果,(1)Calprest ELISAキットによる測定間の相対変動係数は4.3%~23.6%であり,同一患者より便を連日採取し求めた値は,一定の分散に留まり日常検査として十分な信頼性を示した.(2)Matts分類IVの患者群に対しIIIおよび,IIIに対し1の患者群でcalprotectinの値は有意に低値を示した(p<0.05およびp<0.005).(3)ステロイド治療抵抗性の4症例にGMCAPを2クール施行したところ,Matts重症度スコアとcalprotectinがともに低下した.以上より便中calprotectin測定は,UC患者の病勢を的確に把握する一手段となりうることが示唆された.
  • 奥瀬 千晃, 四柳 宏, 高橋 泰人, 林 毅, 鈴木 通博, 飯野 四郎, 尾形 靖一郎, 前山 史朗, 打越 敏之, 岩渕 省吾
    2003 年 100 巻 1 号 p. 28-34
    発行日: 2003/01/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は49歳,男性.Borrmann2型の胃癌,多発性肝転移と診断された.腫瘍マーカーはAFP12552.9ng/ml,PIVKA-II 3.7AU/mlと高値を示した.組織学的には両者とも肝様細胞からなる中分化型腺癌であり,AFP,PIVKA-II抗体で染色された.胃癌細胞でAFP,PIVKA-IIが同時に産生されている貴重な症例であり,過去の文献的考察を加えて報告する.
  • 古島 寛之, 小田 彩, 木島 洋征, 坂部 俊一, 丸野 順子, 浜田 宏子, 杉坂 宏明, 村上 重人, 松藤 民子, 高木 一郎, 山 ...
    2003 年 100 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 2003/01/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は60歳男性.全身浮腫を主訴に平成12年6月当科を受診.低蛋白血症,軽度の蛋白尿よりネフローゼ症候群の疑いで外来通院していたが,呼吸苦も出現したため8月11日当院腎臓内科に入院となった.入院後の精査にてネフローゼ症候群は否定され,糞便中α1アンチトリプシンクリアランス高値,99mTC-diethylenetriaminepentaacetic acid human serum albuminシンチグラムにて小腸への明らかな漏出像を認め,蛋白漏出性腸症(Protein losing enteropathy:PLE)と診断した.抗核抗体陽性,補体低下などより自己免疫機序が関与したPLEと考え,平成12年11月よりプレドニゾロンの投与を開始した.その後免疫抑制剤,ステロイドパルス療法を併用したが効果は一時的で,平成13年1月敗血症を併発し死亡した.自己免疫機序が関与したと考えられるPLEにおいて,副腎皮質ホルモン製剤や免疫抑制剤の使用を考える上で示唆に富む症例である.
  • 藤井 恭子, 中村 志郎, 原 順一, 川島 大知, 稲川 誠, 十河 光栄, 飯室 正樹, 神野 良男, 山上 博一, 渡辺 憲治, 押谷 ...
    2003 年 100 巻 1 号 p. 42-47
    発行日: 2003/01/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は33歳,クローン病の男性.急性腹症で緊急入院となった.腹部X線で著明な小腸,大腸の拡張像を認め,腹部CTでは門脈内ガス像が確認され門脈ガス血症をともなう腸閉塞と診断した.経肛門的チューブ挿入による多量なガス排出後,症状は消失した.腹部X線から遠位大腸での閉塞を疑うも内視鏡検査で有意な狭窄を認めず術後の癒着が原因と考えられた.門脈ガス血症を合併した極めてまれなクローン病の1例を経験したので報告する.
  • 杉木 孝章, 羽鳥 隆, 高崎 健, 吉田 克己
    2003 年 100 巻 1 号 p. 48-51
    発行日: 2003/01/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は48歳,女性.繰り返す下血を認めるも上下部内視鏡で出血源は不明.小腸造影,血管造影では小腸腫瘍が疑われたが小腸内視鏡で腫瘍を確認できなかった.その後も下血を繰り返したため緊急開腹を行い,小腸腫瘍を確認し小腸部分切除術を施行した.組織学的には平滑筋肉腫と診断された.原因不明の消化管出血では小腸腫瘍も念頭におくべきで,特に小腸造影を注意深く行うことが重要で,確定診断に至らぬ場合には開腹手術も考慮すべきと考えられた.
  • 谷川 佳世子, 篠原 美絵, 新 浩一, 池原 孝, 畑 宗一郎, 川船 隆史, 石井 耕司, 住野 泰清, 渡辺 善則
    2003 年 100 巻 1 号 p. 52-56
    発行日: 2003/01/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は51歳の男性.昼食を摂取した数時間後に突然出現した上腹部痛を主訴に当院を受診した.既往に高血圧や外傷はない.腹部US上,上腸間膜動脈は大動脈分岐部より2cmから約3cmまで著明に拡張して,内腔に高エコーの膜様物が認められた.腹部血管造影では,同部に径約3cmの動脈瘤が確認され,一部は数珠状に描出された.その後,保存的に経過を観察しているが,2年7カ月を経てなお経過良好である.外科的治療例の報告は多いが,保存的治療例として示唆に富むと考え報告する.
  • 梅川 康弘, 西下 千春, 岡本 栄祐, 奥山 俊彦, 頼 敏裕, 池田 敏
    2003 年 100 巻 1 号 p. 57-61
    発行日: 2003/01/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は64歳の女性.肝細胞癌,C型肝硬変として治療中であった.肝細胞癌の治療のため入院した際に高度の貧血が認められた.消化管出血は認められず,網赤血球の著減,特徴的骨髄像所見および血清ウイルス抗体価からパルボウイルスB19によるpure red cell aplasiaと診断した.脾腫が高度の肝硬変症例ではパルボウイルスB19感染症は貧血の原因として考慮すべきである.
  • 沼田 政嗣, 松元 有希子, 落合 俊雅, 松岡 均, 栗林 忠信, 井戸 章雄, 林 克裕, 坪内 博仁
    2003 年 100 巻 1 号 p. 62-65
    発行日: 2003/01/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は27歳,男性.慢性C型肝炎のIFN治療目的で入院.眼底に病変のないことを確認し,IFN-β600万単位/日を合計8週間投与した,IFN投与終了時の眼底検査で両眼に綿花様白斑が出現し,投与後も網膜症,硝子体出血の増悪を認め,硝子体摘出術を施行した.通常,IFN網膜症は自然消退傾向が強く,予後良好とされているが,本症例のようにIFN投与終了後に重症化し両眼失明の危機にさらされたIFN網膜症の報告はなく,今後注意すべき副作用の1つであると考え報告した.
  • 清水 康仁, 松本 潤, 高西 喜重郎, 大谷 泰一, 由里 樹生, 南 智仁
    2003 年 100 巻 1 号 p. 66-72
    発行日: 2003/01/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は75歳男性,両下肢浮腫の精査にて腹部超音波検査施行時,胆嚢・総胆管結石を指摘された.腹部CTでは門脈右枝,中肝静脈,右肝静脈,肝右葉を認めず,胆嚢は肝内側区域に接していた.MRCPでは右肝管は根部より描出されなかった.以上より胆嚢・総胆管結石を合併した肝右葉欠損症と診断した.外来通院中に急性化膿性胆管炎を生じ緊急手術施行,開腹所見も術前の画像所見に一致し,肝右葉は完全欠損していた.胆嚢摘出・総胆管切石・T-tubeドレナージを施行.術後経過は良好で現在無症状である.
  • 堀木 紀行, 丸山 正隆, 藤田 善幸, 鈴木 由布子, 田中 剛史, 下村 誠, 谷川 寛自, 佐々木 英人, 藤原 美恵子, 鈴木 高祐 ...
    2003 年 100 巻 1 号 p. 73-78
    発行日: 2003/01/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は膵体部進行癌の68歳男性.経口摂取不良となり,X線上でイレウス像がみられ,上部および下部内視鏡検査では明らかな狭窄はなかった.腹水細胞診で腺癌がみられ,癌性腹膜炎と診断,中心静脈栄養管理とした.経鼻胃管にて症状が一時的に改善したが再び増悪,腹水も貯留し,塩酸ゲムシタビン1000mg/m2,週1回の点滴静注を開始した.5週目からイレウス症状は消失,7週間の連続投与後,1週間休薬し,再び3週間投薬した.この時点で,固形物の経口摂取が可能となり,CT上でも膵体部に見られた腫瘍と腹水はほぼ消失した.経過は順調であったが肺塞栓症をおこし死亡した.剖検で膵臓と腹腔内に変性した低分化型腺癌細胞を認め,治療が著効していることを確認し得た.
  • 雷 毅, 東條 淳, 大平 弘正, 滝口 純子, 渡辺 研也, 中川 貴司, 大山 仁, 坂 充, 小原 勝敏, 佐藤 由紀夫
    2003 年 100 巻 1 号 p. 79-81
    発行日: 2003/01/05
    公開日: 2008/02/26
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