日本消化器病学会雑誌
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胆石症と膵障害との関連についての臨床病理学的研究
芳賀 紀夫
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1973 年 70 巻 8 号 p. 820-834

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抄録

昭和45年2月から昭和47年9月まで, 東北大学第1外科において胆石症の診断のもとに開腹術の行われた151例に対して膵生検を行い, そのうち119例に対してセクレチン試験 (S試験) を行つた. また, 同一方向に切面を有する56例について胃疾患例31例を対照として組織計測を行い, 胆石症における膵障害の実態を検索し, 次の結果を得た. すなわち 1) S試験を行つた119例中膵外分泌機能障害例は軽度障害25例, 中等度障害4例, 高度障害1例計30例 (25.2%) であつた. 2) 障害因子別では, 軽度障害例では液量低下例8例, 最高重炭酸塩濃度低下例12例, 総アミラーゼ量低下例5例であり, 全障害例30例中では液量低下例10例, 最高重炭酸塩濃度低下例17例, 総アミラーゼ量低下例9例であつた. 3) 結石の所在部位, 種類とS試験成績との間には有意の相関はなかつた. 4) S試験中等度以上障害例は胆管拡張例, 胆汁内細菌培養陽性例, 血清総コレステロール高値例に多くみられた. 5) 膵実質占拠率はS試験中等度以上障害例, ビ系石例, 胆管結石例で低かつた. 6) 膵実質占拠率は対照群では加令と共に減少したが, 胆石群では一定の傾向を示さなかつた. 7) 組織学的病変の頻度および程度とS試験成績中等度以上障害例との間には相関がみられた. 8) 胆石群と対照群における膵組織像に差はみられず, 胆石症151例中慢性膵炎と診断し得た例は5例(3.3%)のみであつた.

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