1980 年 77 巻 3 号 p. 395-409
継代ヒト肝癌培養細胞(LiC-1大塚)を標的細胞とするヒトリンパ球の細胞障害性につき,走査型および透過型電顕により,経時的観察を行つた.正常ヒト末梢血リンパ球,特にnon E rosette形成細胞が標的肝癌細胞に対して,最も強い障害作用を示し,混合培養12~24時間後にリンパ球は標的細胞に喰い込むように接着し,後者は変性ないしは融解壊死に陥つた.両細胞接触部において,形質膜の三層構造は正常に保たれ,200~400Åの間隙が存在したが,ruthenium red染色標本では,この間隙は両細胞形質膜を被うRR陽性のsurface coatで満たされ,それらは互いに接着ないしは融合していた.この超微的接合を介してリンパ球は標的細胞に障害作用を及ぼすと考えられた.