1983 年 80 巻 10 号 p. 2202-2207
北欧で広節裂頭条虫症患者にしばしばみられる寄生虫性悪性貧血は本邦では1例の報告例もない. 本症患者11例に57Co-ビタミンB12-内因子, 58Co-ビタミンB12各0.25μgを上部空腸内にゾンデを用いて投与し Schilling test を施行, さらに木原らの Damaso de Rivas 変法にて駆虫した虫体の57Coおよび58Coの摂取率を測定した. Schilling test では10%以下の低値を示したのは57Co, 58Co各2例にすぎず, 虫体の57Co, 58Co摂取率も各投与量の8.6±8.4%, 11.8±15.5% (x±SD) にすぎなかつた. このように本邦で寄生虫性悪性貧血がみられないのは条虫によるビタミンB12摂取率が低いことが一因である可能性が示唆された.