消化性潰瘍を癌巣内に合併する胃癌は759病変中131病変 (17.3%) であつた. 131病変の潰瘍合併胃癌の特徴を病理組織学的に分析した. 潰瘍合併胃癌の特徴は, 肉眼型が陥凹型早期癌あるいは陥凹型早期癌類似進行癌, 組織型が未分化型癌, 好発部位が中間帯などであつた. 癌が粘膜下層以下に浸潤すると潰瘍は深部浸潤部に合併しやすく, このために悪性サイクルを呈す胃癌は発育が緩徐であると推測された. また逆追跡で癌の浸潤部に消化性潰瘍の続発が証明された1例と線維症の時相 (F分類) から, 癌の浸潤部に隣接し, F1あるいはF2の線維症を呈す潰瘍は癌浸潤巣に2次的に生じた潰瘍であると考えられた.