日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
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低血糖を合併した肝細胞癌の臨床的検討
火野坂 徹
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1986 年 83 巻 4 号 p. 792-799

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抄録

17例の肝細胞癌に見られた paraneoplantic syndrome の一つである低血糖の発生機序を検討した. 低血糖肝癌の頻度は2.9%であつた. 発育が速く, AFP高値の巨大肝腫瘍で, 多くは未期症状として認められ, 血糖値の維持には大量の経静脈的糖投与が必要であつた. 組織学的には肝硬変を伴うことが多い以外特徴はなく, 膵の変化は軽度であつた. 糖負荷曲線は平坦型を呈しIRI, c-peptide は前値低値, 低反応で, IRG前値は高値であつた. 肝癌に見る低血糖は, 癌の急速な発育による糖の消費の亢進と肝硬変の存在や巨大腫瘍による肝での糖代謝の場の減少, 低栄養状態などのために糖新生が減少し, 生体への糖供給不足をきたす事が主因と考えられた.

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