食道静脈瘤に対する摘脾を含む直達手術後の, 肝硬変, 特発性門脈圧亢進症 (以下IPH) の門脈血流量を超音波ドップラー法で測定し, 摘脾の門脈血行動態に及ぼす影響を検討した.
対象は肝硬変12例, IPH 4例, その他6例の計22例である. 対照として, 既報の, 外科的処置を受けていない未処置の肝硬変, IPHの門脈血流量を使用した.
肝硬変の直達手術後の門脈血流量は, 門脈逆流症例1例を除いて11.5±4.8ml/min/kg (対照肝硬変群: 15.0±7.4ml/min/kg, n=65), IPHの直達手術後では5.4±1.7ml/min/kg(対照IPH群: 22.8±9.3ml/min/kg, n=13) であつた. 肝硬変, IPH共に直達手術後に門脈血流量の低下が認められたが, IPHにおいてその低下が著しかつた.
この直達手術後の門脈血流量の変化及び, 両疾患の間での変化の相違は, 肝内血管抵抗上昇部位の違いにより, 理解されることを示した.