2020 年 5 巻 4 号 p. 167-172
【目的】重複した後下小脳動脈(posterior inferior cerebellar artery: PICA)と前脊髄動脈 (anterior spinal artery: ASA)が,vasa corona と外側脊髄動脈(lateral spinal artery: LSA)を介し吻合し,その側副血行路に生じた破裂動脈瘤に対して n-butyle-2-cyanoacrylate(NBCA)を用いて塞栓術を行った症例を報告する.【症例】44 歳女性.突然の頭痛を主訴に救急搬送された.CT で後頭蓋窩にくも膜下出血と頭蓋頚椎移行部に異常血管を認めた.超選択的脳血管造影検査では,重複 PICA と拡張した ASA が vasa corona と LSA を介して吻合しており,その側副血行の一部に破裂瘤を認めた.ASA から vasa corona にマイクロカテーテルを進め,動脈瘤ごと NBCA を用いて塞栓を施行した.【結論】重複 PICA に吻合した vasa corona を含む pial network 内に発生した破裂動脈瘤に対して,詳細な血管造影により複雑な血管解剖を理解し,安全に NBCA 塞栓術を行うことができた.