【目的】経静脈的塞栓術にて治療した posterior condylar canal (PCC)近傍の硬膜動静脈瘻を経験したので報告する.【症例】60 代男性.持続的な拍動性耳鳴を主訴に受診.脳血管撮影にて上行咽頭動脈,後頭動脈からの feeder が PCC 前方の骨内 shunted pouch に流入し,左 posterior condylar vein(PCV)に流出していた.局所麻酔下に shunted pouch から PCV 内を経静脈的に塞栓し,術後に合併症は認めなかった.【結語】PCC 近傍の硬膜動静脈瘻は稀であるが,その診断および治療には解剖学的理解および 3 次元回転撮影の再構成が非常に有用であった.
【背景】未破裂脳動脈瘤の自然閉塞は非常に稀である.破裂脳動脈瘤,巨大脳動脈瘤,解離性脳動脈瘤における自然閉塞は過去に報告されている.しかし,血管内治療を試みた後に自然閉塞した未破裂脳動脈瘤の報告は渉猟し得る限りでは見当たらない.【症例呈示】症例は 70 歳女性,他院の脳ドックで未破裂脳動脈瘤を指摘され,加療目的で当院へ紹介となった.コイル塞栓術を試みたが,マイクロカテーテルの安定化が得られないため手技完遂が困難であり,瘤内にコイルを挿入することなく手技を終了した.術直後の頭部 MRA では脳動脈瘤は残存していたものの,半年後の頭部MRA および 3D-CTA では脳動脈瘤は自然閉塞していた.【結論】脳動脈瘤の自然閉塞症例は稀である.その機序については不明であるものの,特にコイル塞栓術を試みた症例における未破裂小型脳動脈瘤の自然閉塞例は極めて稀であるため報告する.
【目的】重複した後下小脳動脈(posterior inferior cerebellar artery: PICA)と前脊髄動脈 (anterior spinal artery: ASA)が,vasa corona と外側脊髄動脈(lateral spinal artery: LSA)を介し吻合し,その側副血行路に生じた破裂動脈瘤に対して n-butyle-2-cyanoacrylate(NBCA)を用いて塞栓術を行った症例を報告する.【症例】44 歳女性.突然の頭痛を主訴に救急搬送された.CT で後頭蓋窩にくも膜下出血と頭蓋頚椎移行部に異常血管を認めた.超選択的脳血管造影検査では,重複 PICA と拡張した ASA が vasa corona と LSA を介して吻合しており,その側副血行の一部に破裂瘤を認めた.ASA から vasa corona にマイクロカテーテルを進め,動脈瘤ごと NBCA を用いて塞栓を施行した.【結論】重複 PICA に吻合した vasa corona を含む pial network 内に発生した破裂動脈瘤に対して,詳細な血管造影により複雑な血管解剖を理解し,安全に NBCA 塞栓術を行うことができた.
【目的】Anterior condylar confluence(ACC)硬膜動静脈瘻の術前検討に,対側流入血管撮影が有用であった症例を経験したので報告する.【症例】53 歳女性.半年前から右拍動性耳鳴を自覚し, 3 カ月後に同側の眼痛と結膜充血,眼瞼腫脹を認めた.MRA で右舌下神経管周辺に異常血管信号を認め,arterial spin labeling(ASL)で右下錐体静脈(inferior petrosal sinus: IPS)から上眼静脈(superior ophthalmic vein: SOV)にかけて高信号を呈していた.脳血管撮影では対側総頚動脈撮影にて右 ACC 硬膜動静脈瘻が明瞭に描出され,同病変に対して経静脈的塞栓術を行い,硬膜動静脈瘻の消失,症状の改善を得た.【結論】ACC 硬膜動静脈瘻の複雑な静脈解剖の把握に対側総頚動脈撮影が非常に有用であり,良好な治療結果へと結びついた.
【目的】上腕動脈閉塞に対し,バルーン付きガイディングカテーテルでの血栓吸引が奏効した 1 例を経験したため報告する.【症例】71 歳の男性,既往に心原性脳塞栓症あり,アピキサバンを内服していた.左上肢の痺れ感を主訴に受診し,来院時の NIHSS は 3 点であった.rt-PA 静注療法や機械的血栓除去術も念頭に置いて検査し,右後頭葉に塞栓性脳梗塞を認めたが,画像と症状は一致しなかった.左上腕動脈が触知されず,上肢血管の塞栓症を疑い,血管造影で左上腕動脈近位閉塞と診断,続けてバルーン付きガイディングカテーテルでの血栓吸引術を施行し,再開通を得た.【結論】上腕動脈閉塞に対し,バルーン付きガイディングカテーテルからの吸引で治療に成功した初めての報告であり,stroke mimics として搬送された場合でも,機械的血栓除去術が行える施設であれば速やかにカテーテル治療ができる可能性がある.
【目的】総頚動脈瘤は稀であり,治療法が確立されていない.感染性総頚動脈瘤に対してステント併用コイル塞栓術を行った症例を報告する.【症例】85 歳女性.腎障害の既往あり.歯科治療を契機に生じた感染性左総頚動脈瘤に対して,整流効果による動脈瘤増大抑制を期待し,closed cell stent を 2 本 overlap させた頚動脈ステント留置術を施行した.造影剤使用による腎障害の増悪を避けるため,術中に頚動脈超音波検査をガイドとして用いることで造影剤の使用量を減じた.術後ステント短縮によって動脈瘤入口部に非被覆部が生じたため,造影剤を少量使用したコイル塞栓術を追加し治療完了した.【結論】感染性総頚動脈瘤に対して初回治療としてステント留置術を施行した後,再治療としてコイル塞栓術を行い,良好な転帰が得られた 1 例を経験した.
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