2020 年 5 巻 4 号 p. 179-184
【目的】上腕動脈閉塞に対し,バルーン付きガイディングカテーテルでの血栓吸引が奏効した 1 例を経験したため報告する.【症例】71 歳の男性,既往に心原性脳塞栓症あり,アピキサバンを内服していた.左上肢の痺れ感を主訴に受診し,来院時の NIHSS は 3 点であった.rt-PA 静注療法や機械的血栓除去術も念頭に置いて検査し,右後頭葉に塞栓性脳梗塞を認めたが,画像と症状は一致しなかった.左上腕動脈が触知されず,上肢血管の塞栓症を疑い,血管造影で左上腕動脈近位閉塞と診断,続けてバルーン付きガイディングカテーテルでの血栓吸引術を施行し,再開通を得た.【結論】上腕動脈閉塞に対し,バルーン付きガイディングカテーテルからの吸引で治療に成功した初めての報告であり,stroke mimics として搬送された場合でも,機械的血栓除去術が行える施設であれば速やかにカテーテル治療ができる可能性がある.