2023 年 8 巻 1 号 p. 24-31
【目的】進行性に脳幹浮腫を呈した海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻(CS-dAVF)の患者に対して,迅速な経静脈的塞栓術により良好な結果を得ることができた1例を経験したので報告する.【症例】80歳女性.結膜充血・複視にてCS-dAVFを発症した.頭部MRI/MRAでは,両側海綿静脈洞外側後方に流入血流を認め,右上眼静脈の著明な拡張を認めた.経過観察中に眼症状が増悪し,MRI再検により,右延髄・右橋・右中小脳脚に新たに浮腫の出現を認めた.脳血管撮影検査にて,海綿静脈洞(CS)からpontine bridging vein(PBV)を介する脳幹部への静脈流出を認めた.左下錐体静脈洞経由でCSに到達し,PBV起始部を含めてコイル塞栓を施行し,完全閉塞が得られた.術直後から眼症状は改善し,脳幹浮腫も改善した.【結論】脳幹浮腫を有するCS-dAVFにおいて,早急な治療介入により症状増悪が予防できる可能性が示唆された.