抄録
血管柄付遊離広背筋移植を用いた間接的血行再建術について報告した。広背筋は、浅側頭動静脈を露出し開頭をおこなった後に、胸背動静脈を血管茎として採取する。採取する筋体の大きさは、虚血となっている範囲にあわせて必要な大きさを決める。血管吻合は浅側頭動静脈と胸背動静脈を用いて各々端々吻合をおこなう。この方法を31歳のモヤモヤ症候群の患者に用いた。術後の血管撮影で広背筋からの側副血行を確認でき、脳血流検査で脳循環予備能の改善がみられた。この広背筋を用いたEMSは、モヤモヤ病に限らず虚血性の病態で前大脳動脈や後大脳動脈領域を含むような広範囲の血行再建を必要とする場合に選択肢の一つとなる方法である。