抄録
両側海馬の病変は記憶障害をきたすが、腫瘍性病変により純粋健忘をきたすことは稀である。今回我々は両側側頭葉に侵入したastrocytomaによる純粋健忘症例を経験した。症例は32才男性。神経心理学的検査で高度の順向性健忘を認めたが人格や知能の障害は認めなかった。MRIおよびmethionine PETで両側側頭葉の病変を認め、開頭術による組織検査の結果astrocytomaと診断された。その後放射線治療およびinterferon-β治療を行なったところ徐々に記憶障害は改善し、入院6か月後には職場復帰した。両側側頭葉の腫瘍性病変による記憶障害は、適切な治療により症状の軽減が期待できると思われた。