抄録
症例は63歳女性。左小脳橋角部に限局した類上皮腫をleft suboccipital approachにて全摘出したが、術直後より左側のみでなく右側の聴力喪失をもきたした。術前high-resolution CTでは病的に拡大した前庭水管が認められており、少なくとも右側の聴力喪失はこの前庭水管を通して術中脳脊髄圧の変化が直接内耳に伝播され蝸牛障害を引き起こしたことによるものと推測された。Large vestibular aqueductは内耳奇形の一つで、耳鼻咽喉科領域では、小児のみならず成人の感音性難聴との関連も示唆され注目されてきている。本症候群はわずかの頭部外傷や運動などでも聴力障害をきたしうることが知られており、脳神経外科手術の際にも細心の注意を払うが必要がある。