抄録
交通外傷を契機に胸髄症状を呈したspinal arachnoid cystについて報告する.症例は49歳男性で高速道路をシートベルトを締めて走行中にコンクリートに激突した.その際に激痛が背部に生じた.事故後より背部の鈍痛は残存していたが、4週間目よりと両下肢の知覚異常が始まった.受傷後3.5ヶ月目にMRIを施行.sagittal viewでは第胸椎4-6間で胸髄の後方にlow intensity(T1WI)のmassとして認められた.さらに1ヶ月後臨床症状の増悪後のMRIにてlow intensity massは同一部立の前後に増大を示した.手術所見、組織像より肥厚したarachnoid cystと診断された.spinal aracknoid cystは先天的な場合には脊髄後方のseptum posticumから高頻度に発生している.殆どは無症状に経過する.本症では受傷時の衝撃は3点で固定されたシートベルトに加わり、腹圧、胸髄静脈圧を上昇させることにより無痛候性arachnoid cystが急速に増大またはcyst内に出血を生じ、これが症候性arachnoid cystに発展した可能性が極めて高いと考えられた.