抄録
両側慢性硬膜下出血に対して一期的に両側の血腫を除去した直後に一側の動眼神経麻痺と脳幹症状を呈した85歳の男性について報告する.入院時CTでは両側の脳実質を強く圧排する分厚い血腫を認めた.緊急手術にて両側をほぼ同時に血腫除去を行った,すなわち,左の減圧を最初に2分後に右を行ったにもかかわらず,術後に右動眼神経麻痺と左不全片麻痺,意識障害を生じた.左の最初の減圧によって右の頭蓋内圧が相対的に上昇し左右の圧均衡がくずれ,この2分間に一過性の右の鈎ヘルニアが生じたと考えられた.術後のMRIでは右動眼神経の内側への変位が認められた.このような巨大な両側慢性硬膜下出血の手術において,正確な両側同時かつ緩徐な減圧が必要と考えられた.