抄録
症例は緑内障、白内障の既往を持つ73才女性。3日前からの両眼痛を主訴に来院。20才から恥毛、腋毛脱落あり、25才から乳汁分泌を伴わない無月経を認めていた。既婚であったが子供なし。X-P上トルコ鞍の風船状拡大、鞍底菲薄化と、MRIで第3脳室のトルコ鞍内への著明な嵌頓、視神経、視交叉の下方偏位、更にイソビストCTでは鞍内の完全陰影欠損を呈した。水頭症、良性頭蓋内圧亢進は認めず。検査上両耳側半盲あり。内分泌検査、治療は患者の拒否により施行しえなかったが長期にわたる下垂体機能不全が疑われた。明らかな下垂体腺腫は描出されなかったが病因として下垂体腺腫の自然退縮か無症候性卒中が最も疑われた。