日本農芸化学会誌
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乳酸菌の酵素に關する研究
(第9報) “Coracemiase”の存在に就て
北原 覚雄大林 晃
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1954 年 28 巻 3 号 p. 232-236

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抄録

(1) Lactobacillus plantarum No. 11から得たcell-free racemiaseの溶液を透析して, racemiaseには透析性の助酵素のあることを認めた.
(2) このCoracemiase溶液は殆んどその力を減衰することなく減圧濃縮し又乾燥粉末とすることが出来る.
(3) Coracemiase溶液をアセトンで分別沈澱すると,50%と90%の間で沈澱する区分に活力の殆んど総てが移行する.
(4) 90%アセトンで沈澱させた粗製coracemiase区分の収量は乾菌1gに対し70~80mgで黄色琥珀状を呈し,有機性P2O56.34%を含有し, 260mμの紫外線部に顕著な吸収帯を示す. OHLMEYER法による還元を行つても吸収帯には全く変化が見られない.
(5) ビタミンB複合体,無機イオン, ATP, DPN等通常考え得る助酵素類及びその混合物を以つてしてもcoracemiaseの作用を代替し得ない.
(6) Racemiaseの作用機構がピルビン酸を介する水素授受でないという自説を更に強く主張した.
終りに臨み本実験に種々の側面的事実を提供された福井農学士に心から謝意を表し度い.尚本研究の経費の一部は文部省科学研究費に仰いで行ることを附記する.

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