日本農芸化学会誌
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稲胡麻葉枯病菌の生産する新抗生物質(オフィオボリン)について
中村 路一石橋 慶次郎
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1958 年 32 巻 10 号 p. 739-744

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抄録

(1) 植物病原菌の生産する新抗生物質を検索中に,稲胡麻葉枯病菌(Ophiobolus Miyabeanus)が抗黴性および抗細菌性物質を生産することを認め,本有効成分をオフィオボリン(Ophiobolin)と命名してその培養条件を検討した.
(2) オフィオボリンは培養濾液をベンゼンにて抽出しエーテル溶液から柱状結晶が得られ,エーテル再結晶により融点181°の白色柱状結晶が得られた.
(3) 紫外部および赤外部吸収曲線,その他の理化学的性質,および抗菌スペクトルからオフィオボリンは新しい抗生物質と推定された.
(4) オフィオボリンは白蘚菌,トリコモナスおよび柿炭疽病菌,桃炭疽病菌,瓜炭疽病菌,甘藷黒星病菌,茄立枯病菌等の植物病原菌の生育阻止作用を示した.
(5) マウスのLD50によりオフィオボリンの毒性を検討した.
(6) オフィオボリンの稲葉加傷塗布部位に胡麻葉枯病類似の斑点を生じ,籾の発芽,発根を阻害し,自然罹病稲葉からもオフィオボリン類似の性質を示す区分が抽出されることから,稲胡麻葉枯病起因物質の一つであろうと推定した.
尚著者らは昭和30年10月,日本農芸化学会第158回関東支部講演会において本報告を発表したが,たまたま昭和32年4月,伊太利のOrsenigo(18)Heiminthosporium oryzaeの培養濾液中よりCochliobolinと称する物質を結晶状にとりだし,籾の発芽を阻害することから胡麻葉枯病の毒素であると報じているが,その融点,紫外部吸収スペクトルからみてOphiobolinと同一物質ではないかと思われる.しかし赤外部吸収スペクトルその他の理化学的性状,あるいは抗菌性等については一切ふれていない.

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