1958 年 32 巻 10 号 p. 736-738
レンニンのカゼインに対する分解作用につき実験して次の結果を得た.
(1) カゼインがレンニン作用により凝固するときの顕著な変化は可溶性窒素化合物を生ずることであり,それが凝固に直接関係するレンニンの特異的作用と推定される.
(2) 結晶レンニンのカぜイン分解作用はpH 6以上においてpH 3以下よりも強く,レンネット市販品にはペプシンの存在が考えられる.
(3) レンニンの作用によリカゼインから遊離アミノ酸は生じない.また2%三塩化醋酸可溶性化合物を構成するアミノ酸にチロシンは殆んど含まれないか或いは含まれても種めて僅かである.この点に関してトリプシン(pH 8.0),パパイン(pH 7.5)及びペプシン(pH 2.0)の作用はレンニン作用と全く異なる.しかるにペプシン(pH 6.5)作用はむしろレンニンと類以の作用を示している.
(4) カゼインの凝固直後と90分後における2%三塩化醋酸可溶性部分構成アミノ酸には,アスパラギン酸の量に差が認められる他は大差ない.