1958 年 32 巻 10 号 p. 745-749
卵をアルカリ液中に浸漬貯藏した場合,その卵白の凝固過程に伴う卵白中のメチオニン,シスチンの変化を検討するにあたり,先ず卵白をアルカリにて凝固させる方法及びその方法により卵白を凝固させた場合に,その凝固状態が鳥の種類,品種或いは卵の鮮度により差異を生ずる事実を検討した.その結果は次の通りである.
(1) 鶏卵卵白を凝固させるに要するアルカリ量は〓卵の場合より多く,又新鮮卵は貯蔵により卵白が水様化した卵より,その凝固に要するアルカリ量が多い.
(2) アルカリにより凝固した卵白は更に過剰のアルカリにより水様化し,この場合ニトロプルシッド反応が陽性となる.
(3) 鳥の種類,品種により卵殻におけるアルカリ滲透速度が異るが,これは主として卵殻の厚さ,多孔性の差によるものである.
(4) アルカリ液浸漬中に卵白中のメチオニン,シスチンは共に減少するが,シスチンの減少は著しく,アルカリによる卵白の凝固過程にはシスチンの関係する結合状態に変化を生ずるものと推定される.