日本農芸化学会誌
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糖精製に利用するイオン交換法の研究
(第4報)色素汚染の傾向と共存塩類の影響に就いて
岩科 進
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1958 年 32 巻 11 号 p. 882-889

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抄録
クロール形R_??_NX型アニオン交換樹脂4種類の市販製品を用い,炭酸飽充法並びに活性炭による前処理を経た糖液を対象とし, Na2SO4を使用して塩類無添加並びに添加の2例について各々20サイクルに到る迄の脱色性能と色素汚染の傾向及びそれらに及ぼす塩類の影響について検討を加えた.その結果,脱色,再生そして汚染の関係は極めて密接に樹脂の母体構造に基く物理性並びに化学性,就中多孔性に因することが認められた.即ちサイクルの増加に伴い,被交換吸着物質の樹脂よりの溶出は,再生効率,脱色率の関係に於て殆んど平衡に達することが認められ,色素汚染による交換能力の急速な減衰は,順次樹脂中に蓄積されて行く汚染物質の量が,或る許容限界に達して急激に現われるもので,この度合は樹脂自体の母体構造と被汚染物質の形態により異なる傾向のものであることが推定された.又これは塩類共存下では,樹脂の網目組織内に拡散浸透するに有利な分子径の小さいイオンとしてのSO4--とCl-の交換がその親和性の強さに助成されて優先する結果,一様に脱色力,再生効率及び色素汚染率に変化を与えた.これは特にI型多孔質性製品, II型多孔質性製品及びII型緻密質性製品との比較に於て, II型緻密質性製品の色素汚染率が尠なく,再生効率の高いことにより確認し得た.更にこれらの汚染物質は,標準再生法では効果的に除去し得ない事実を明確ならしめ,これが対策としての回生法(Restoration)の必要性に就いて言及した.
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