日本農芸化学会誌
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ヒジキ中の新activatorフィトールによる膵エステラーゼ活性の促進
小村 毅長山 英男和田 せつ
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1975 年 49 巻 3 号 p. 149-155

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抄録

先にヒジキから単離した強力な新促進物質フィトールについて,本報ではそのactivator作用の対象となる酵素活性が何であるかについて検討した.
(1) フィトールの作用を受けるのは,トリブチリン,オリーブ油等の不溶性基質を分解する,いわゆる典型的なリパーゼ活性ではなく,メチルブチレート,トリアセチン等の水溶性基質を分解するエステラーゼ活性であることが明らかとなった.
(2) DFPにより,リパーゼ活性は全く阻害されないのに対し,エステラーゼ活性とそのフィトールによる促進は明瞭に阻害されたことから,エステラーゼ活性がフィトールの作用の対象であることがいっそう支持された.
(3) pH安定性では,フィトール添加のエステラーゼ活性は,広いpHに安定なコントロールの活性とは異なり, pH 5.0付近に鋭い曲線を示し,この点むしろリパーゼ活性と似た形を示した.
(4) 熱安定性では,エステラーゼ活性はリパーゼ活性よりやや不安定であり,そのフィトールによる促進は50°Cから減少し, 60°Cでほぼ完全に失われた.
(5) NaCl添加により,エステラーゼのコントロール活性自体は増加し,かつそのフィトールで促進される部分のみが逆に打ち消され,この点リパーゼ活性と異なる挙動を示した.

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