2013 年 85 巻 3 号 p. 151-163
東日本大震災によって生じた原子力発電所事故による食品の放射性物質汚染問題が発生した.本稿は,食品の放射性物質汚染問題に対する行政の検査結果から検査の必要性を示しつつ,小売業者の対応について整理した.小売業者の対応は一様でないものの,消費者の安心確保のため,自主的検査を公的検査と組み合わせて実施する企業が多かった.なかでも生協は,消費者の組織でありながらも,組合員には生産者も多いことから難しい対応を迫られている.また自主検査の実施と経営の善し悪しとは関連性が弱いことも窺えた.現状では検査なしに食品の安全を確保できる状況ではないため,これからも長期に放射性物質汚染問題を注視する必要がある.