2014 年 86 巻 2 号 p. 69-78
農業経済学会の歴史の中間時点時であった1970年頃,戦前から存在していた農業における過剰就業のあり様の解明が中心的課題とされていた.この研究を引き継いだ,アジア諸国での農業雇用の形態を解明した研究業績をみると,それぞれの地域の農業発展経路の違いによって,農業賃金が平均労働生産性とほぼ一致している所得均分化がみられるジャワと,農業賃金が限界生産性に一致している市場原理が働いている中部タイといった,異なった形態の存在が確認できる.そしてグローバル化の時代である今,世界にみられる農業構造の多様性を解明することこそが,これらの農業経済学に課されている重要課題であることを強調する.