抄録
重度知的障害者の多くは自ら、痛み、苦痛、不快、喜び、満足感、などを的確に伝える
ことが出来にくいことが多い。従来、人のストレスや感情を評価するには,脳波、脳血流
量などの脳機能、血圧、心拍数などの循環機能、呼吸数、呼吸量などの呼吸機能、発汗、
体温、眼球運動などが指標として用いられてきた。これらの生理機能は、交感神経系と視
床下部-下垂体-副腎皮質系の内分泌系の二系統で調節されている。後者はコルチゾール
が代表的なホルモンであり、前者はカテコールアミンがストレスにより分泌が亢進するこ
とが知られている。
本研究では、コミュニケーションの取り難い、採血拒否の強い重度知的障害者のストレ
ス度を測定するために、唾液中に含まれるアミラーゼ活性を測定し、血中のエピネフリン
分泌量を推定するという方法を用いた。本方法では採血が必要ではなく、唾液を用いるた
め非侵襲性的に測定することが可能であり、かなり正確に測定時点での生体内のエピネフ
リン分泌量を推定出来るものと思われる。
今回は、経口と経管栄養摂取者における日内変動を測定した。また、摂食・入浴・歯磨
きの行動下で、経口と経管栄養摂取群、抗てんかん薬服用と非服用群、また活動性の乏し
い人と対象群に分け、唾液アミラーゼ値を測定し、血中エピネフリン濃度を推定して、ス
トレスの度合いを測定した。