国立のぞみの園紀要
Online ISSN : 2435-0494
知的障害者・精神障害者が利用する移動支援における課題と重度の知的障害者・精神障害者が在宅生活を快適に暮らすために必要なサービスについての調査・研究(その2)
行動障害のある知的障害児者が在宅生活を快適に暮らすために 必要なサービスに関する研究
志賀 利一村岡 美幸相馬 大祐森地 徹田中 正博
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研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

2011 年 4 巻 p. 36-47

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抄録

行動障害のある知的障害児者が,居宅系あるいはそれ以外の障害福祉サービスを活用しながら,より快適な生活へ向けてどのような取り組みを行っているかを調査する探索的な研究を行った.方法としては,継続的な見守りが必要と考えられる重度知的障害児者と一緒に生活している家族への半構造化されたインタビューにより,①障害の状況と子育ての経過,②現在利用している福祉サービスの状況,③生活上の課題とより快適な生活に向けての希望を聞き取る方法を採用した.結果として,訪問系を含め複数のサービスを積極的に活用している事例,特別支援学校を含む日中活動以外のサービスを全く利用していない事例,そして日中活動以外に定期的に児童デイサービスや日中一時支援を活用している事例の3つのパターンに分けられた.複数のサービスを活用している家族は,サービス利用に慣れるまでに親子ともに長い時間がかかるため,家族のニーズを把握し寄り添う専門家の存在の重要性を指摘している.また,障害福祉サービスの利用に消極的になる理由として,①時間をかけて創り上げてきた安定した生活リズムを崩したくない,②サービス利用をコーディネートする負担が親にかかる,③託せるヘルパー等との巡り合わせが難しい,などがあげられる.この結果から,包括的に生活を見渡すことができ,ある程度長期的な見通しを持ちながらサービス調整できる人材の必要性が示唆された.

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© 2011 独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園
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