国立のぞみの園紀要
Online ISSN : 2435-0494
4 巻
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  • 障害者支援施設における矯正施設等を退所した知的障害者等の 受入れ・支援の実態及び職員研修についての調査研究
    小野 隆一, 木下 大生, 水藤 昌彦
    2011 年 4 巻 p. 1-14
    発行日: 2011年
    公開日: 2022/12/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究は,障害者支援施設が,矯正施設等を退所した知的障害者の受入れについての 意向やその実態,及び矯正施設等を退所した知的障害者を受け入れる際に職員に必要と考える 知識・技術について明らかにすることを目的とした.調査対象は,障害者支援施設1,429施設とした (回収率は54.6%).その結果,矯正施設を退所した知的障害者の受入れについて,積極的に受入 れる,もしくは検討する旨の意向を概ね6割の障害者支援施設が示していることが明らかになった. 一方,受入れが困難との回答の理由として,支援プログラムがない,専門職員がいない旨の回答が多くみられ,関連知識・技術を取得する必要性が認識されていることも明らかになった.また,特に必要と考えられている知識・技術は,知的障害者の犯罪特性,福祉施設が支援をする意義やチームケアとキーパーソンの役割であることが分かり,それらを中心とした研修のプログラム構築の必要性が示唆された.
  • 障害者福祉施設における矯正施設等を退所した知的障害者等の職員研修についての調査研究
    木下 大生, 小野 隆一, 水藤 昌彦
    2011 年 4 巻 p. 15-25
    発行日: 2011年
    公開日: 2022/12/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    国立重度知的障害者総合施設のぞみの園(以下「当法人」と略記)において,矯正施設等を退所した知的障害者等の職員研修プログラムの開発をするため,2010年度に研究検討委員会を立ち上げ,研修プログラムを構築した.本研究では,開発した研修プログラムの内容が矯正施設を退所した知的障害者を支援する,またはしようとする障害者福祉施設の支援員の実践に即した内容であるかを検討するため,研修プログラムを用い試行的に研修を行い,その内容の満足度を受講者に対してアンケート調査を行った(回収率44.9%). その結果,用意した6つの研修プログラムとも「参考になった」,「どちらかといえば参考になった」を合わせると概ね9割となり,研修プログラムの内容については適切であることが示唆された.また,研修の設定について研修の内容量,資料の量,設定されたプログラム,時間配分等8項目にわたって尋ねた結果,「適切」,「どちらかといえば適切」と適切である旨の回答が全ての項目で7割を超え,研修の設定方法についても概ね適切であったことが確認された.
  • 障害児者が利用する移動支援事業の実態に関する研究
    相馬 大祐, 志賀 利一, 村岡 美幸, 森地 徹, 田中 正博
    2011 年 4 巻 p. 26-35
    発行日: 2011年
    公開日: 2022/12/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    障害者自立支援法で,地域生活支援事業として位置づけられた移動支援事業の実態について明らかにすることを目的にした.先行研究から,(1)移動支援事業には地域格差が存在する,(2)障害児に対象を限定した場合,移動支援は日中一時支援や児童デイサービスの代替補完の役割を担っている,(3)移動支援を利用している人は,60歳以上の人も存在する,(4)移動支援事業所の課題としては,従事者不足があげられる,以上の4点を仮説として設定し検証した. 研究方法としては,まず,全国の市区町村を対象とした市区町村悉皆調査,次に事業所アンケート調査,第3に事業所ヒアリング調査を実施した. その結果,移動支援の実態として,(1)地域格差の存在,(2)障害児サービスの代替補完の役割,(3)介護保険サービスの代替補完の役割,(4)従事者不足と福祉有償運送の課題などが明らかとなり,移動支援事業は様々なサービスの代替補完としての役割が明らかとなった.
  • 行動障害のある知的障害児者が在宅生活を快適に暮らすために 必要なサービスに関する研究
    志賀 利一, 村岡 美幸, 相馬 大祐, 森地 徹, 田中 正博
    2011 年 4 巻 p. 36-47
    発行日: 2011年
    公開日: 2022/12/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    行動障害のある知的障害児者が,居宅系あるいはそれ以外の障害福祉サービスを活用しながら,より快適な生活へ向けてどのような取り組みを行っているかを調査する探索的な研究を行った.方法としては,継続的な見守りが必要と考えられる重度知的障害児者と一緒に生活している家族への半構造化されたインタビューにより,①障害の状況と子育ての経過,②現在利用している福祉サービスの状況,③生活上の課題とより快適な生活に向けての希望を聞き取る方法を採用した.結果として,訪問系を含め複数のサービスを積極的に活用している事例,特別支援学校を含む日中活動以外のサービスを全く利用していない事例,そして日中活動以外に定期的に児童デイサービスや日中一時支援を活用している事例の3つのパターンに分けられた.複数のサービスを活用している家族は,サービス利用に慣れるまでに親子ともに長い時間がかかるため,家族のニーズを把握し寄り添う専門家の存在の重要性を指摘している.また,障害福祉サービスの利用に消極的になる理由として,①時間をかけて創り上げてきた安定した生活リズムを崩したくない,②サービス利用をコーディネートする負担が親にかかる,③託せるヘルパー等との巡り合わせが難しい,などがあげられる.この結果から,包括的に生活を見渡すことができ,ある程度長期的な見通しを持ちながらサービス調整できる人材の必要性が示唆された.
  • 国立のぞみの園モデル構築に向けて
    原田 将寿, 柳田 正明, 岡田 みゆき
    2011 年 4 巻 p. 48-53
    発行日: 2011年
    公開日: 2022/12/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    2008年の社会福祉士及び介護福祉士法改正により,社会福祉士養成課程新カリキュラムにおける相談援助実習で学ぶべき内容が新たに提示された.それを受け,当法人では2009年に実習プログラムの改訂とプログラム・マニュアルの作成を行った. 昨年度は,開発した実習プログラムおよびプログラム・マニュアルの評価・検証を行った.当法人で相談援助実習を行った学生を対象に,実習前,中,後で質問紙調査を行った結果,支援計画の作成や,家族や親族,後見人,利用者の友人を対象とした支援の内容については,実習中だけではなく,実習後の教育機関における指導が必要となることが考えられた.また,実習前に「できている」と評価した項目も,実習中に現実的な課題に直面する中で評価が下がり,終了時に再び高まるパターンも確認された.これは,現実の課題の難しさに関わっていると考えられる.  研究最終年度である今年度は学生のサンプル数を増やし,昨年度の調査結果と併せて,のぞみの園で作成した実習プログラム及びプログラム・マニュアルの内容の妥当性について検証した.
  • 森地 徹, 志賀 利一, 木下 大生, 相馬 大祐
    2011 年 4 巻 p. 54-64
    発行日: 2011年
    公開日: 2022/12/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    知的障害者入所施設からの入所者の地域移行において,特に重度・高齢の知的障害者に対する地域移行のプロセスモデルの作成を図ることを本研究の目的とした.そのため,地域移行において特徴的な取り組みが行われている知的障害者入所施設10施設を対象に,重度・高齢知的障害者の地域移行における課題と支援内容に関する聞き取り調査を地域移行時と地域生活時のそれぞれの時点で行った.その結果,地域移行時の課題は移行者に対する支援と環境調整をいかに行うかということにあり,地域移行時の支援は移行者に対する体験支援と環境調整をいかに行うかということにあることがわかった.また,地域生活時の課題は移行者の状態に応じた生活支援と環境調整をいかに行うかということにあり,地域生活時の支援は居住の場や日中活動の場などにおいて移行者の生活全般をいかに支えるかということにあることがわかった.
  • 森地 徹, 志賀 利一, 木下 大生, 村岡 美幸, 相馬 大祐
    2011 年 4 巻 p. 65-74
    発行日: 2011年
    公開日: 2022/12/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究では,海外の知的障害者入所施設からの地域生活移行における研究動向から,地域生活移行の評価の視点ならびに地域生活移行の効果について,整理することとした.方法は,キーワードによる文献抽出を行い,海外の地域生活移行に関する文献を整理した. 文献抽出の結果, 811件の文献が該当した.抽出した文献の中から,知的障害者入所施設からの地域生活移行に関連するものを抽出したところ,51件の文献が該当した.さらにこの中で,該当数が最も多い移行前後の移行者の生活に関連するものに着目し整理することとした. 文献を整理したところ,地域生活移行に伴う移行者の適応行動,不適応行動,生活の質の変化に着目をしている文献が多く存在したため,これらの文献の研究結果についても整理し,地域生活移行の効果を確認した.その結果,海外で行われた地域生活移行では,地域生活移行に伴い,移行者の生活の質や生活環境,適応行動や生活能力の向上にプラスの変化が見られていた.
  • 地域移行に向けての地域生活体験プログラム作成と実践
    大熊 伸幸, 浅田 美千代, 真鍋 正枝, 槻岡 智子
    2011 年 4 巻 p. 75-82
    発行日: 2011年
    公開日: 2022/12/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    重度知的障害者が地域生活に必要なスキルを習得できるように支援を行うためには,日中活動として定期的に習得機会を設けることが必要だと考え,そのためのプログラムを作成することとした. プログラムは,「移動」「バス利用」等10個を用意し,平成21年4月から平成22年9月までに6回実施した.1回の期間は3ヶ月とした.各種プログラム項目や支援内容については,回毎に見直しを行いながら実施した. 当初は,「移動」「買い物」等のプログラムを用意し,それぞれを別々に実施することで地域生活に必要なスキルの習得をねらった.しかし,4回を終了したところで,生活は「流れ」であることに気づき,一人でホームの留守番から「電話」を受け「移動」をして「買い物」をして帰ってくるという日常生活でありそうな一連の流れについて職員を伴わないで実施をした.このプログラムを経験した利用者は「地域生活の自信」が芽生えていった様子がうかがえた.
  • 茂木 修, 島﨑 美登世, 鹿島 崇弘, 木下 大生, 相馬 大祐, 有賀 道生
    2011 年 4 巻 p. 83-97
    発行日: 2011年
    公開日: 2022/12/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    精神科病院に入院していた知的障害者の女性1名に対し,入所施設における行動障害のある利用者に対する支援,具体的には居住環境の構造化,日中活動,自立課題,スケジュールに関する取り組みを行った. その結果,不穏状態の回数に変化はみられなかったが,不穏状態時以外の問題行動の回数が減少傾向にあった.この結果から,精神科病院を退院し,入所施設で生活する行動障害のある利用者に対する支援の効果がうかがえた.不穏状態の発生要因の解明の検討や本人の自己肯定感獲得に向けた取り組みが今後の課題と言える.
  • 木下 大生, 有賀 道生, 上原 徹, 村岡 美幸, 井沢 邦英, 志賀 利一
    2011 年 4 巻 p. 98-107
    発行日: 2011年
    公開日: 2022/12/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究の目的は,Debら1)によって開発された知的障害者用認知症判別尺度,Dementia Screening Questionnaire for Individuals with Intellectual Disabilities (DSQIID)の日本語版の信頼性・妥当性の検証である.方法は,医師により認知症と診断された知的障害者40人(ave.64.2歳,sd.±9.5,med.62.0,男性57.5%,女性42.5%,障害の程度:重度70.0%,重度以外30.0%)に対して,原版の条件に則した支援員等2人にDSQIIDの試行を2回依頼した.その結果,評定者2人の調査対象への2回の調査の一致率は,1回目が34.0%~98.1%(ave.76.1,sd.±12.6,med.76.5),2回目が50.0%~100.0%(ave.76.0,sd.±11.8,med.75.5)であった.Test-retestの結果は,一致率49.1%~100.0%(ave.85.4,sd.±11.3,med,86.8),各調査項目の一致率は,76.3%~95.0%(ave.85.8,sd±4.8,med,85.0)であり,評定者間,Test-retestとも高い一致率ならびに信頼性が認められた.妥当性については,DSQIIDでの認知症検出率を算出した結果,調査対象1人につき計4回調査をした結果,100.0%検出されたのが60.0%,75.0%が17.5%,全く検出できなかったのが10.0%という結果であった.今回の研究では十分な数値であったといえるが,より精度を高めるため別視点からの検証も必要であると考えられる.
  • 登坂 庸平, 花岡 典子, 倉澤 正典, 大内 慶子, 小俣 祐紀, 齋藤 正
    2011 年 4 巻 p. 108-115
    発行日: 2011年
    公開日: 2022/12/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    「認知症」と診断された当法人の知的障害者への支援事例を検証し,①認知症罹患前後における行動の変化と,②その変化への支援のあり方,の2点について明らかにすることを目的とし た.本研究では2事例を対象に検証した. 行動の変化としては,「徘徊」,「物が整理できなくなる」,「不眠」,「着衣執行」等が確認された.これらの変化に対し,「環境の変化」,「人間関係」,「役割」,「わかりやすさ」を軸に支援していくことが重要であることがわかった.そして,利用者個々の状態に合わせた具体的な支援内容を導きだすためには,状況に至った背景となる【原因】を探り,【必要な支援】は何かを考え,そこから【具体的な支援内容】を導き出すというアセスメント過程を職員間で検討することが欠かせなかった.この過程は,今後も認知症を罹患した知的障害者への支援を検討する際に,その支援のあり方について考える上でも重要であると感じている.
  • PTSDの治療経過を通して
    鈴江 美希, 齋藤 史泰, 小池 千鶴子, 有賀 道生
    2011 年 4 巻 p. 116-119
    発行日: 2011年
    公開日: 2022/12/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    心的外傷体験に曝された知的障害をもつ兄と広汎性発達障害(PDD)をもつ弟に,精神科医による薬物療法とともに臨床心理士が心理的介入を行った結果,2人の症状・状態と治療経過に異なる点を認めた.知的障害をもつ兄には,PTSDの特徴である①再体験・侵入,②回避・麻痺, ③覚醒亢進の3症状が顕著に現れた.さらに子どものPTSD症状に現れやすい食欲の変化,落ち着きのなさ,強迫症状などの行動も認められた.一方,PDDをもつ弟にはPTSDの主症状は目立たず,衝動性・多動性の高まり等の状態の変化がみられた.2人の症状・状態と治療経過には,認知機能や知的能力の障害特性の違いが背景にあると考えられ,個々の症状や状態を多面的に把握し,障害特性を踏まえた治療や介入・支援が必要であることが示唆された.
  • 堀口 博, 松本 義徳, 吉田 浩美, 黛 智則, 杉田 祐子, 吉江 麻里, 槻岡 正寛, 井沢 邦英, 山川 治, 有賀 道生
    2011 年 4 巻 p. 120-124
    発行日: 2011年
    公開日: 2022/12/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    知的障害を有する高齢者に対し摂食・嚥下スクリーニング検査として,クエン酸生理食塩水液を超音波ネブライザーで吸入させる咳テスト(couth test:CT)を実施した.嚥下障害の実態を明らかにするとともに,咳テストを行った全症例に対して嚥下内視鏡検査(VE)またはビデオ嚥下Ⅹ線透視検査(VF)を行い,咳テストとの相関性を比較検討した.1%重量クエン酸生理食塩水液で陰性であった利用者は誤嚥なし7名,顕性誤嚥,不顕性誤嚥は確認されなかった.2%重量クエン酸生理食塩水液で陰性であった利用者は誤嚥なし4名,顕性誤嚥1名,不顕性誤嚥は確認されなかった.2%重量クエン酸生理食塩水液で陽性であった利用者は誤嚥なし12名,顕性誤嚥,不顕性誤嚥は確認されなかった.現段階では咳テストが高齢重度知的障害者に対して有効であるという結果には至らなかったが,今後も咳テストの実施件数を増やし,データの解析を行うとともに,利用者個々に応じた摂食・嚥下スクリーニング検査を実施していくことが望ましいと考えられた.
  • 吉江 麻里, 井沢 邦英, 有賀 道生, 槻岡 正寛, 佐藤 あつ子, 黛 智則, 松本 義徳, 吉田 浩美, 堀口 博, 杉田 祐子, 山 ...
    2011 年 4 巻 p. 125-129
    発行日: 2011年
    公開日: 2022/12/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    一般的に反芻は乳児に多く,患者自身が報告することはまれであり,反芻動物でみられる逆蠕動はヒトでは報告されていないため,成人における発症率や病態生理は不明な点が多い.反芻は通常,観察により診断され心理社会的既往を聴取することによって,基礎にある情動的ストレスが明らかになることがあるが,知的障害者では聴取することが難しく,的確な評価がなされていない.そこで,反芻習癖を持つ知的障害者に対し調査票を作成し,群馬県内知的障害者入所施設4施設674名に関して記載を依頼した結果,実際に反芻を認められたのは55名であった.
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