看護薬理学カンファレンス
Online ISSN : 2435-8460
2020東京
セッションID: 2020.2_ES-1
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看護薬理学教育セミナー1
『抗がん剤の副作用を軽減し、治療レジメンの完遂をめざす漢方薬 ~漢方薬の薬理作用に基づく適切な処方選択を通して~』
上園 保仁
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抄録

がん患者はがん自身、そして抗がん剤の副作用等の身体の痛みに悩まされま す。また、がんを抱えての就労という社会的問題、さらになぜ私ががんに?といっ たスピリチュアルな痛みにもさいなまれます。がん患者の持つこれらのいわゆる トータルペインへの対応は大変重要です。患者が納得して生きるための社会を 支えるのは、多職種チームでの医療が中心となりますが、なかでも患者およびそ の家族の最前線で接する看護師の役割は極めて重要です。

 私たちはこれまで、がん患者の Quality of Life 向上のための基礎から臨 床へつながる研究を行ってきました。特に支持・緩和療法に関する研究を進め てきました。明日の患者の症状緩和には新薬を開発すること、今悩んでいる患者 には既存の薬物を役立つように応用することが重要です。その中で、中国から 伝わり日本の土壌ならびに日本人の体質に合わせて発展してきた「漢方薬」に 注目し、抗がん剤で起こる副作用の改善のために漢方薬を用いることで、がん 患者の生活の質を上げるための研究を行っています。

例えば、抗がん剤や放射線治療を受けるがん患者は高い頻度で口内炎を発 症します。この口内炎は「食べる、飲む、話す」という基本的生活にも悪影響を 及ぼします。私たちは漢方薬「半夏瀉心湯」が口内炎を早く治すことを基礎研 究および臨床試験で明らかにしました。

医師、薬剤師、看護婦などの医療スタッフはみんな、科学的エビデンスのあ る薬物を用いたいと思っています。一方患者も「有効である薬物」を使いたい と思っています。患者の最前線で働いている看護師が、漢方薬がなぜ効くのか、 どうしてこの漢方薬がこの症状を和らげるのに使われるのかを理解し伝えること ができれば、それは患者のためになっていると確信いたします。本日は漢方薬研 究で明らかになった科学的エビデンスをお話しいたします。最前線で働く皆様に 漢方薬で明らかになってきた科学的エビデンスを理解いただき、患者にそれらを 正確に、やさしく伝えていただき、がん患者の治療レジメンの完遂にお役立てい ただければと思います。

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© 2020 本論文著者
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