看護薬理学カンファレンス
Online ISSN : 2435-8460
2020東京
セッションID: 2020.2_S2-1
会議情報

シンポジウム2
諸外国のプレコンセプションケアの動向:FertiSTATを中心に
前田 恵理
著者情報
会議録・要旨集 オープンアクセス

詳細
抄録

プレコンセプションケア(直訳すると受胎前ケア)は「前思春期から生殖可能年

齢にあるすべての人々の身体的、心理的および社会的な健康の保持および増進」 と定義される。成人疾病胎児起源仮説に始まるライフコース研究から発展してきた 概念で、次世代を視野に入れたヘルスプロモーションの一分野である。プレコンセ プションケアにおいては、短期的・長期的に子供を持つ意思があるのか、子供を 持つ予定があるなら、いつ何人くらい子どもを持ちたいのかといったリプロダクティブ ライフプラン(RLP)を各々が作成し、一生を見渡すことが重要である。そしてRLP に沿った情報提供により、望まない妊娠、加齢に伴う不妊、胎児に影響する要因 への曝露を減らし、自身の健康と妊娠転帰を改善することができる。特に晩産化の 進む先進諸国では、現在妊娠を考えていない男女を含めて全ての男女がプレコン セプションケアの機会を得ることが重要である。

「現在はまだ妊娠を考えていない男女」を含めたプレコンセプションケアの事例 を紹介すると、スウェーデンでは助産師が避妊相談外来の場を利用して、本人の RLPに沿ったプレコンセプションケアを実践している。助産師は、RLPについてカウ ンセリングしながら妊孕性に影響するリスク要因や、プレコンセプション期に取るべき 予防行動(葉酸摂取、適切な体重維持、アルコール・たばこ・化学物質・薬物の 回避)、不妊治療等に関する情報提供を行っており、利用者の知識向上が報告さ れている。優れたリプロダクティブヘルスケアの土壌があることで知られるスウェーデ ンならではの取組と言えるかもしれない。また、英国で開発されたFertiSTATは 少予算でプレコンセプションケアを実践できるカウンセリングツールで世界保健機関 にも採用されている。文献レビューと専門家によるディスカッションを通じて選ばれた

22 の妊孕性(生物学的な妊娠しやすさ)に関する指標を用いると、妊娠可能な女 性と不妊の女性を高精度で分類可能である。利用者はFertiSTATに従って、自 身のプロフィールを答えるだけで、紙面上でもウェブ上でもエビデンスに基づく個別ア ドバイスを受けることができ、自身の妊孕性の評価と意思決定につなげることができ る。日本語版も開発されたところであり是非活用されたい。

本講演では、プライマリケアとしてプレコンセプション教育を試みる諸外国の事例 について紹介しながら、わが国における現状や課題について考察する。

著者関連情報
© 2020 本論文著者
前の記事 次の記事
feedback
Top