看護薬理学カンファレンス
Online ISSN : 2435-8460
2020東京
セッションID: 2020.2_SP-1
会議情報

特別講演
COVID-19がもたらす褥瘡対策―2020
真田 弘美
著者情報
会議録・要旨集 オープンアクセス

詳細
抄録

2020 年 12月の日本は今、COVID-19 の第 3 波に苦しんでいます。世界中がこの ウイルスに怯え、そして共存する方法を探し求めている状況の中、フロントラインで 尽力されている保健師・看護師をはじめ保健医療従事者に心より敬意と謝意を表し ます。

このパンデミックは医療の在り方、そして看護研究の在り方に劇的な変化をもたら します。療養生活を支援するために寄り添うことを最優先してきた看護が、そばに寄 れず、コミュニケーションもままならない状況の中、新しい看護技術を開発することは 喫緊の課題といえます。そのコンセプトの一つはリモートナーシングに他なりません。 私が専門とする褥瘡対策も大きな転換期を迎えております。COVID-19 がもたら すリモートナーシングはもちろんのこと、この 15 年の間に様々な研究で明らかにされ た Deep Tissue Injury(DTI: 深部組織損傷)とクリティカルコロナ―ゼーションの

診断とそのケア・治療の標準化が必要となってきました。 褥瘡発生の第一の原因はるい瘦などにより、突出した仙骨や大転子に過度な外

力が加わることといわれ、日本では高齢者に頻発しております。皮下組織や筋層が ほとんど萎縮しているために容易に骨までにいたる重篤な褥瘡となります。一方最 近では、痩せていないクリティカルケアを必要とする患者や、社会で生活する車い す使用者の褥瘡が注目されるようになってきました。殿筋や皮下組織などが比較的 発達しており、その部位は虚血に弱く短時間で壊死に陥るため急に重症化するとい う症例、いわゆるDTI 褥瘡が頻発するようになってきました。さらに、不幸にも一旦 褥瘡が発生すると、感染が最も創傷治癒を遅らすのですが、湿潤環境による治療 が進むにつれて、肉眼的には発見できない新しい感染様式の褥瘡も増えてきました。 これをクリティカルコロナイゼーションといい、バイオフィルムが原因といわれています。 これら2 つのアセスメントの重要性を鑑み、日本褥瘡学会は 2021 年1月にDESIGN

- R2020に改定します。 ここでは

1. 褥瘡対策はどこまでリモートケアが可能か?

2. 褥瘡治癒評価スケールであるDESIGN-R はどのように変わるか? について、我々が東京大学グローバルナーシングリサーチセンターで行っている看護 理工学を基盤とした異分野融合型研究を通して、COVID-19 禍の看護をディスカッショ

ンする機会を提供したいと思います。

著者関連情報
© 2020 本論文著者
前の記事 次の記事
feedback
Top