主催: 日本薬理学会
会議名: 看護薬理学カンファレンス 2021 in 札幌
回次: 2021
開催地: 札幌
開催日: 2021/03/07
「ウイメンズヘルス」は女性の一生をトータルにサポートする領域で、思春期~性成熟期~更年期~老年期全ての世代の女性をライフステージに応じた健康管理を行い、生涯を通して疾病の予防を行うことを目指しています。女性の健康に大きな影響を与えているのが、代表的な女性ホルモンであるエストロゲンです。エストロゲンは脳・中枢神経、心臓血管系、脂質代謝系、泌尿生殖器系、骨など、全身のさまざまな臓器に働きかけており、分泌量は20~30歳代をピークとして40歳代を過ぎると減り始め、平均50歳で人生のターニングポイントともいえる閉経を迎えます。更年期は閉経の前後5年間(10年間)で女性の誰もが確実に通る時期ですが、エストロゲン低下が一因となって一生の中でも心身の変化をもっとも感じやすい時期ともいえます。更年期障害に対しては、画一的なアプローチでは解決できないことも多く、幅広い治療の選択肢が必要になります。
エストロゲンに関連して、女性の心身状態を左右するものとして「月経」があげられます。月経に伴って現れる症状として、月経困難症、月経前症候群といった病名がつくものから、ちょっとした不調も経験があるのではないかと思います。また、女性は妊娠、出産、育児といったライフイベントの経験、家庭と仕事との両立、親の介護など、さまざまなストレスを抱えています。ほてり・のぼせ、冷え、発汗、動悸やめまいなどの自律神経失調症状、イライラ、抑うつ気分、不安感、倦怠感、不眠などの精神神経症状などは、更年期に限らず女性にはよくみられます。実臨床では、診断基準に合致しないため病名としてはつけられないものの、明らかに正常な状態とはいえないケースに数多く遭遇します。しかし、西洋医学的に病名がつかないケースこそ「未病」の域であるかもしれず、漢方的アプローチを試みることは有用であると思います。漢方治療では、ひとつひとつの症状を分断せず、患者を全体として捉え、様々な視点から過不足を判断して失調状態からバランスのとれた状態に整えていきます。
本日は、女性がWell-Agingを目指し、QOLを保って健康管理を行っていくための選択肢として、婦人科三大処方でよく知られている「当帰芍薬散」「加味逍遥散」「桂枝茯苓丸」を中心にお話させていただきます。