看護薬理学カンファレンス
Online ISSN : 2435-8460
2021札幌
セッションID: 2021.1_ES-2
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看護薬理学教育セミナー2
薬理学的知識に基づいた抗ヒスタミン薬の選び方~効き目を科学し、理解し、伝えましょう~
吉川 雄朗
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抄録

ヒスタミンは分子量111の小さな生理活性物質で、約100年前に英国のヘンリー・デールらにより見いだされました。ヒトの体内では、アミノ酸の一つであるヒスチジンから生合成され、肥満細胞や好塩基球、腸クロム親和性様(ECL)細胞、神経細胞などの細胞内に多く蓄えられています。細胞外にヒスタミンが放出されると、ヒスタミン受容体に結合することでアレルギー反応や胃酸分泌、腸管収縮、覚醒など様々な生体反応に関わっています。ヒスタミンによる生体反応が過剰に生じると、アレルギー性鼻炎や胃潰瘍が起きることから、ヒスタミンの作用を抑えるために様々な薬物が開発されてきました。

 花粉症に対して用いられる抗ヒスタミン薬(ヒスタミンH1受容体拮抗薬)は、1937年に初めて開発された歴史のある薬で、第一世代抗ヒスタミン薬と第二世代抗ヒスタミン薬とに分類されています。現在でも世界中で広く使用されていますが、第一世代と第二世代では副作用に大きな相違があり、第一世代抗ヒスタミン薬で認められる眠気などの副作用が第二世代では少なくなっています。この違いがどのような機序から生じるのかを説明できればと考えています。胃潰瘍に用いられる抗ヒスタミン薬(ヒスタミンH2受容体拮抗薬)は、胃酸分泌を抑制する薬物としてノーベル賞受賞者であるジェームス・ブラックらによって開発されました。難治性消化性潰瘍に対する外科手術を激減させた歴史的にも重要な薬物で、ブラックが開発したシメチジンは年間10億ドル以上もの売上があり、世界初のブロックバスター薬となっています。ヒスタミンH2受容体拮抗薬には薬の飲み合わせに留意すべき薬物があります。最近では、米国と欧州でヒスタミンH3受容体拮抗薬がナルコレプシー(居眠り病)に対する治療薬として承認されました。これは脳のヒスタミンを増やす薬物であり、脳内におけるヒスタミン作用にも注目が集まっています。

 本口演ではヒスタミンの生理作用を概説した後に、それぞれの抗ヒスタミン薬について薬理学的見地から説明し、最後に当方らのヒスタミン研究成果にも少し触れたいと考えています。与薬の実践者である看護職の皆様に少しでも役立つ知識を提供できれば幸いです。

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© 2021 本論文著者
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