看護薬理学カンファレンス
Online ISSN : 2435-8460
2024石川
セッションID: 2024.2_S2-1
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シンポジウム 2
認知症高齢者のBPSDの緩和に向けたケアマネジメントについて
*髙道 香織
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会議録・要旨集 オープンアクセス

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抄録

認知症に伴う行動・心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia;以下 BPSD)は、例えば認知症の人が入院した後、点滴を抜いてし まう、落ち着かず興奮状態となり「家に帰る」と叫ぶなど、ケア提供者側には突 如とした、不可解な事象として映る。行動を制止したり「今日は帰られない」等、 説得する場合もあるが、それはケア提供者中心の対応であり状況は改善しない。 関係性も悪化し悪循環に陥る。

認知症ケアは、認知症の人の立場に立ち、現在のコミュニケーションのあり様 や過ごしている環境を俯瞰し、改善点に気づいて実践できることから開始してい く。BPSD は認知症の人の苦痛の現れとも言え、コミュニケーションでは、ケア 提供者の聴く姿勢や表情、場面の始まり・終え方等を考えていく。そうしても認 知症の人は、自らの苦痛を明確に言葉で表すことは難しい。そのため言葉だけ に頼らず、認知症の人の行動と心理から、何を発信しているのかメッセージを汲 み捉え、苦痛緩和に焦点をあて考えてみる。メッセージを受け止めケアを行う過 程で、認知症の人それぞれの人生史・生活歴、価値観、選好が、行動や心理と関 連していることがある。大事なことは、認知症の病(やまい)の部分に限らず、そ の人の全体像への関心を持つことと言える。その人中心の道理に矛盾しない関 わりが、BPSDを和らげる要点であり、家族との対話や多職種連携によりそれ を見出せることもよくある。環境面では人的環境の観点から、認知症ケアに関心 を持つメンバーがその場にいるかどうか再考する。認知症の人の周囲に多数の 人がいても、認知症ケアに対する理解・関心が低い環境では、人的環境の改善 が必要となる。全人的苦痛の緩和を図るにはホスピスのように、理念のある環境 の整えが重要である。

認知症の病の軌跡を概観すると、BPSD の顕著な時期は一過性で徐々に弱ま り、より進行したステージへと移る。認知症の不可逆的な進行を、非薬物的なケ アによって止めることはできないものの、今日という日をその人らしく安寧に過ご せるよう支援し、人生が完成する最期までそうしたスタンスで、その人を尊重し た関わりは持ち続けられる。その積み重ねは地道であるが経験知が増え、指針 が得られる。少しずつ認知症の人を支えていく医療・ケアの風土や文化が育まれ ていくよう務めていきたいと思う。

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© 2024 本論文著者
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