主催: 看護薬理学カンファレンス
会議名: 看護薬理学カンファレンス 2024 in 石川
回次: 2
開催地: 石川
開催日: 2023/11/02
認知症の基礎疾患として約 7 割を占め最も多いアルツハイマー病(Alzheimer’s disease:AD)で使用できる治療薬には今まで、コリンエステラーゼ阻害薬(ドネ ペジル、ガランタミン、リバスチグミン)とグルタミン酸受容体拮抗薬(メマンチン) があったが、これらの薬剤は症状改善薬でありAD の病理変化自体は食い止め られず、症状はいずれ進行する。そこで根本的治療、すなわち、病理変化自体を 食い止める疾患修飾療法の開発が急務であった。
AD の病理学的特徴としては、アミロイドβ蛋白(Aβ)から成る老人斑、タウ 蛋白(tau)から成る神経原線 維変化、さらに神経細胞死・脱落があげられる。 なかでも病態においては、Aβが tauに先行して異常凝集して神経細胞を傷害す る過程が重要な役割を果たすと考えられている(アミロイド仮説)。
こういった背景の下、抗 Aβ抗体を中心に AD の病態ステージに応じた様々 な疾患修飾療法が開発されてきた。残念ながら多くは失敗に終わったが、いく つかの有望な薬剤も残っている。2021年 6月、アメリカ食品医薬品局(FDA)は 世界初のAD 根本治療薬としてアデュカヌマブを条件付きで承認した。同年末 に日本国内での承認は見送られたが、2023 年 7月に抗プロトフィブリル抗体で あるレカネマブが FDAで正式承認され、本邦でも同年 9月25日に承認され、12 月20日にはついに臨床現場での使用が可能となった。また、アデュカヌマブ、レ カネマブ以外に第 3 相臨床試験にて有効性が示されたものにドナネマブがある。 ドナネマブは Aβプラークのピログルタミル化修飾 Aβ N 末端に対する抗体で、 同剤は 2024 年 7月2日に FDAで承認され、本邦でも審議結果が注目されている.
アミロイド関連画像異常(amyloid-related imaging abnormalities:ARIA)や インフュージョンリアクションなど解決すべき課題も少なくないが、抗 Aβ抗体を 中心に AD に対する疾患修飾療法の開発は着実に進んでいる。