理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
会議情報

一般演題 ポスター
帯状疱疹後神経痛患者における臨床症状の特徴
中村 祐太江原 弘之稲川 利光上島 賢哉豊川 秀樹安部 洋一郎
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. Cb1384

詳細
抄録
【はじめに、目的】 帯状疱疹後神経痛(postherpetic neuralgia:以下PHN)とは帯状疱疹罹患後に遷延する疼痛であり、国際疼痛学会(IASP)では、帯状疱疹後の皮膚分節の変化に伴った疼痛と定義されている。他覚所見として触覚、痛覚、温・冷覚の低下や90%以上の患者に、アロディニアを認めるとの報告がある(Attal N,2006)。PHN患者は疼痛、感覚障害に加えて筋力低下などの運動障害や抑うつ症状を併発する場合が多く、リハビリテーション(以下リハビリ)の対象となる。そのため、当院ではペインクリニック科における神経ブロック療法などの治療と並行してリハビリを実施している。PHN患者のリハビリを実施していく上で臨床症状を理解する必要があると思われるが、これらに関する報告は少ない。本研究では、PHN患者における臨床症状の特徴を明確にすることを目的として、PHN患者13例の罹患期間、髄節、疼痛、運動、感覚、心理、ADLを調査した。【方法】 対象は平成19年4月~平成23年9月までに当院ペインクリニック科にて入院加療したPHN患者13例。性別は男性6例、女性7例。平均年齢は78.1±8.9歳(59~94歳)。脳卒中や骨折などの既往がある例、廃用症候群が進行している例、精神疾患の既往がある例、顔面領域のPHN例は除外した。調査項目は罹患期間、髄節、疼痛強度、アロディニアの有無、疼痛部位、運動、感覚、心理、ADLを後方視的に調査した。罹患期間は自覚症状が出現した日からリハビリ開始日までとした。疼痛強度はvisual analogue scale(以下VAS)を用いた。運動評価はmanual muscle test(以下MMT)を用いた。心理検査はself-rating depression scale(以下SDS)を用いた。ADL評価はBarthel Index(以下BI)を用いた。【倫理的配慮、説明と同意】 当研究はヘルシンキ宣言に則り、対象者に研究の主旨を説明し、同意を得た上で実施した。【結果】 罹患期間の中央値(25%-75%値)は2(1-5)ヵ月であった。髄節はC8、Th2、L3、L5領域がそれぞれ2例、C5、C5~6、C6~7、Th5~6、L1領域がそれぞれ1例であった。VASの平均値は69.1±18.7mmであった。アロディニアは13例中10例に認められた。疼痛部位は右胸背部、右大腿部、右足部、右上肢、右胸部~上肢、右鼠径部~大腿前面、左鼠径部・大腿後面・下腿前面、右手掌、右前腕、右前腕~手部尺側、右胸背部~腋窩、右手関節、右鼠径部がそれぞれ1例ずつであった。運動は13例中10例に筋力低下が認められた。筋力低下の部位は右肩甲帯~上肢が3例、右下肢が2例、右上肢、右膝関節、左下肢、右肩関節~手指、右肘~手関節・手指がそれぞれ1例ずつであった。感覚は13例中10例に感覚低下が認められた。SDSの平均値は45.2±7.4であり、13例中10例がカットオフ値を上回っていた。BIの中央値(25%-75%値)はPT開始時90(80-100)点、PT終了時100(85-100)点であった。【考察】 PHN患者の症状として一般的に知られている疼痛、感覚障害に加えて、本研究の結果から多くの症例で運動障害、抑うつ状態が認められており、PHN患者の重要な臨床症状と考えられる。運動障害の部位は疼痛部位や各髄節の支配領域を超えて隣接している部位にまで及ぶ傾向がある。運動障害の原因として、罹患期間が短期である症例も多いことから、疼痛や不動による筋力低下の他に何らかの抑制機構が関与している可能性も考えられる。抑うつ状態は疼痛や運動障害や社会的因子による影響が考えられ、慢性疼痛患者が多面的な治療を必要としていることが示唆される。【理学療法学研究としての意義】 PHN患者は疼痛、感覚障害に注目が集まるが運動障害、抑うつ状態を呈している場合が多く、臨床症状をより明確にする必要がある。これらを考慮した上でペインクリニック科等における治療と並行して理学療法士によるリハビリを実施していくことが重要であり、本研究はその一助になると考えられる。
著者関連情報
© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top