農産加工技術研究會誌
Print ISSN : 0369-5174
夏蜜柑果汁に関する研究(第3報)
γ線照射に対する化学成分の変化について
榛葉 良之助鎌野 節子中山 明子
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1961 年 8 巻 6 号 p. 285-288

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抄録

1. 川野夏柑果汁にC060γ線を照射して,その成分におよぼす影響を検討した。
2. 一般成分については,原果汁と照射果汁との間に幾分の相違は認められたが,はたして放射線の影響であるかどうかは,今一度検討の必要がある。
3. 官能検査については,期待した苦味感の減少は認められず,わずかの照射によつても特別の放射能臭を生じ,ジュースへの放射線利用の困難を感じた。
4. ビタミンCについては,照射による影響は大きいが,単独ビタミンC溶液よりはその変化が少ない。
5. アミノ態窒素におよぼす影響はなく,DAVIS法によるフラバノンの量は照射量の増加につれて漸減している。
6. ペーパークロマトグラフ上においては,有機酸,糖,およびアミノ酸の各成分へのγ線照射(150×104rep)の影響は全くないことが認められた。
7. 本実験を総括するに,小原ら7)による冷凍柑橘濃縮果汁を使用してγ線を照射したさい「ビタミンCを除く各成分については,あまり大きな変化はない。」という結論とほとんど同じ結果を得たが,官能検査における臭味の変化のみは全く相違しており,夏柑果汁特有のものかどうか,今一度実験を行ないたいと考える。
本実験を行なうにあたり,御協力を頂いた静岡大学放射線研究室の方々に,深く感謝の意を表します。

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