日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
甘藷澱粉工場廃水による河川の汚濁に関する研究
鹿児島県肝付川水系について
山本 喜男冨田 裕一郎
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1964 年 11 巻 4 号 p. 157-164

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抄録

鹿児島県肝付川および支流串良川流域の澱粉工場のうちから,工場の規模ならびに澱粉製造工程の相違を考慮して,肝付川流域の3工場,串良川流域の2工場を選定し,これら甘藷澱粉工場の廃水および河川の汚濁の実態を調査し,つぎのような結果を得た。
(1) ノズルセパレーターを設備している工場廃水は,5,000~6,000ppmのBODを示し,かなり汚染されたものが流出している。
(2) 沈殿池を施設している工場廃水のBODは10,000ppm以上を示し,ノズルセパレーター廃水の約2倍の値を有する。
(3) 廃水のCODはBODと近似の値を示し,CODを測定して,おおよそのBODを推定しうる。
(4) 原料甘藷洗浄廃水はBOD約60ppmであるが土砂量多く浮遊性物質を約800ppm含む。
(5) 工場廃水は,そのまま河川に放流されている例もあるが,通常,排水溝中で過剰用水や甘藷洗浄水その他で希釈されて河川に流入しており,各工場の条件によって河川に放流されている総廃水の汚染度に相当の相違が見られる。
(6) 澱粉工場の廃水が河川に流入することにより,除々にではあるがpH, DOは低下しCODは増加する。
(7) 河口付近ではpHは7.00を呈し中性にして,BOD約30ppmの河水が有明湾に流入している。
(8) すり込み操業を終えた工場廃水のBODは30~160ppmで,河川に流入する際はさらに希釈されほとんど問題にならない。

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