日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
パン生地醗酵中の糖の消長について
アミラーゼ添加無糖生地における糖の消長
田中 康夫桑原 一子佐藤 友太郎
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1965 年 12 巻 5 号 p. 184-191

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抄録

(1) 農林27号とマニトバよりそれぞれ調製された小麦粉における,各種糖類の含量には大差が認められなかった。
(2) 生地中では,混ねつ開始後10分間くらいのごく短時間に糖量の大きな変動が起こり,多量に生成されるマルトースの大部分は,この間に生成されてしまい,またシュクロースは酵母のインベルターゼによって加水分解されて消失し,いっぽうにおいてグルコース,フラクトースの増大が起こる。
(3) 生地中での糖の動きは,マルトース以外は農林27号,マニトバとも大体同様であったが,マルトース蓄積量は農林27号では非常に小さく,マニトバでは著しく大きい。
(4) 農林27号生地にα-アミラーゼを添加すると,マルトースが増大してマニトバ生地におけるアミラーゼ無添加の場合のマルトースの動きに近くなり,醗酵曲線が似かよってくる原因が,このマルトース量の増大に起因していることがわかった。
マニトバ生地にα-アミラーゼを添加した場合のマルトースの蓄積は著しく,3%以上にも達する。
(5) グルコアミラーゼの生地への添加は,SDI値の小さい農林27号ではマルトースの蓄積が減少し,SDI値の大きいマニトバでは著しいマルトース蓄積の増大が起こる。

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