日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
茶抽出液の粘度に関する研究(第1報)
岡田 文雄古谷 弘三
著者情報
ジャーナル フリー

1965 年 12 巻 7 号 p. 267-273

詳細
抄録

多重段浸出法で抽出液を得る場合,濃度の増加に伴って抽剤の圧力が増し,流れは低下する。これの原因のひとつに粘度の影響が考えられることから,茶種別抽出液の粘度を調査したが,その結果を要約するとつぎのごとくである。
(1) 茶種別抽出液の粘度は煎茶が高く,ついで紅茶,ほうじ茶の傾向で,また濃度との関係は,高粘度における差は大きいが,希釈することによって,粘度の低下は緩慢となる。
(2) 温度が粘度に及ぼす影響は,他の液体の場合と同様,低温で高く,温度が上昇するにつれて低くなり,したがって流動率は大きくなって液の流れは容易となる。また,茶種別の粘度の差異と,濃度の違いによる粘度のひらきは,温度が高くなるにつれて僅少となった。
(3) 抽出時の抽剤温度の違いを,60℃と70℃で比較したが,一定の傾向はみられなかった。
(4) 沈殿物は茶種によってその形態が異なり,煎茶のものが真綿状に連なったのに比べ,紅茶は同じ形でも短くきれ,ほうじ茶は断片的な形態を示した。
(5) ペクチンおよび沈殿物の含有量は,ほうじ茶に多く紅茶に少なく,また両者の間にはr=0.929と1%の水準で正の相関関係が認められた。
(6) 沈殿物の粘度について,抽出液を対照にその溶液を比較した。その結果,各茶種とも両者の値に差が認められず,抽出液の粘度には,この沈殿物の影響がかなり大きいものと思われた。
沈殿物と粘度との関係は,沈殿物の量より茶種別によって異なる沈殿物の形態が,粘度に作用するもののようで,この点についてはさらに検討する必要がある。
(7) 気泡が粘度に及ぼす影響は,気泡の混入が多くなるにつれて抽出液の粘度も急増し,流動率は低下する。また濃度は同じでも液温の低いものが気泡の影響は顕著で,粘度の増加も著しい。

著者関連情報
© 社団法人 日本食品科学工学会
次の記事
feedback
Top