日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
寒天液の噴霧乾燥
松橋 鉄治郎高橋 文一北沢 利美中島 源二倉持 明
著者情報
ジャーナル フリー

1970 年 17 巻 1 号 p. 1-5

詳細
抄録

粉寒天(市販品)から調製した寒天液,およびオオブサからの抽出液を供試材料とし,実験用遠心噴霧乾燥装置によって噴霧乾燥した寒天の物性変化,噴霧乾燥寒天の特徴を検討し,あわせてその経済性についても若干の考察を試みた。
噴霧乾燥品のゲル融点は,噴霧乾燥をしないもとの粉寒天,または抽出液から解凍脱水乾燥して製造した寒天のゲル融点と,ほとんど変わりがなかった。抽出液を噴霧乾燥したもののジェリー強度は,解凍脱水乾燥した寒天に比べてかなり小さかった。これは後者が,浸水解凍の工程を経ているのに対し,前者は冷水可溶性成分を抽出液同様に含有したことと噴霧乾燥時の加熱条件が高温にすぎたこととの影響によるものと考えられた。しかし,噴霧乾燥時の加熱が製品のジェリー強度におよぼす影響は,一般には比較的軽少であり,送風温度は130℃または以下で十分であると認められた。
噴霧乾燥品の粒径は3~30μのものが大部分を占め,中空の球形であった。また,吸水性,溶解性において噴霧乾燥品には通常の粉寒天と異なる挙動が見られた。なおまた,実操業規模における寒天の回収率を今後検討する必要があると考えたいっぽう,噴霧乾燥による寒天製造の経済性の見とおしを推論した。

著者関連情報
© 社団法人 日本食品科学工学会
次の記事
feedback
Top