日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
果実およびそ菜類のタンニン成分
(第5報)鉄イオンによる発色
中林 敏郎
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1970 年 17 巻 6 号 p. 231-236

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抄録

鉄イオンによるタンニンや低分子ポリフェノールの発色について検討した結果,
(1) 発色は第2鉄イオンによって起こり,アスコルビン酸で第1鉄イオンの酸化を防止,または第2鉄イオンを還元すれば発色しない。
(2) タンニンやポリフェノールの種類によってその発色の可視部吸収スペクトルのλmax・と吸光度は異なり,pHの影響を強く受ける。また温度が高いほど発色は強くなるなどの理由から,この反応はタンニンの一般的な定量法には適しない。
(3) ミカン,ブドー酒などクエン酸や酒石酸といったキレート能をもつ多塩基性酸を多く含む食品は鉄イオンで発色しにくい。
(4) 発色防止剤としてのキレート剤が有効に作用するpH領域は,キレート剤の種類によって著しく異なり,その防止能にも差がある。
またこれらの実験結果からタニンを含む食品の鉄イオンによる発色は,アスコルビン酸の添加,多塩基性酸を用いるpHの低下,およびその食品のpHで作用するキレート剤の使用によって充分に防止できるものと考えられる。

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