抄録
酸化油の関与する褐変現象において,その生成物が抗酸化性を有するか否かを検討し,さらにその褐変機構を明らかにする一助として酸化油を用いたモデル試験を行なった。すなわち,酸化油にアミノ酸,揮発性アミノ化合物,糖などを加えたモデル系において,それらの褐変生成物質よりアセトン可溶区をとり,その抗酸化性,還元力,窒素含量などをメイラード反応の場合と比較検討した。その結果,酸化油水抽出区-アミノ酸の系では抗酸化性を示し,メイラード反応の場合と抗酸化性,還元力,窒素含量などがほぼ等しく,酸化油中の水溶性物質とアミノ酸との反応は糖-アミノ酸の反応と同じような反応機構を経るのではないかと思われた。いっぽう,揮発性アミノ化合物-酸化油の系,および揮発性アミノ化合物-酸化油-糖の系の場合は抗酸化性は示されずメイラード反応の性質と異なる点が多く,メイラード反応とは別の反応機構を経るものと思われた。