1972 年 19 巻 2 号 p. 96-100
アルコールによる大豆蛋白質の粘性増加の機構を明らかにするために,各種のアルコール中での粘性挙動,超遠心挙動および濁度を検討した。この結果蛋白質濃度(0.1~1.5%)およびアルコール濃度(メタノール60%以下,エタノール40%以下,プロパノール30%以下)が高いほど,アルコールの炭素数が多いほど粘性が増加し,また超遠心沈降分析によりアルコール溶液中での蛋白質は明らかに重合していることが認められた。したがってアルコール溶液中での大豆蛋白質の粘性の増加は,尿素で認められた蛋白質分子のunfoldingに基づくことより,むしろその重合によるものと考えられた。
アルコール溶液中での2-メルカプトエタノール添加により,蛋白質の経時的粘性はさらに著しく増加し,長時間放置後の粘性と濁度の経時的挙動がほぼ同一であった。したがって2-メルカプトエタノールは,より疎水性であるアルコール溶液中ではむしろ蛋白質分子を重合させる作用があるものと考えられた。