日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
食品の芳香成分の保持について
(第1報) 糖溶液の乾燥状態における芳香成分の保持
杉沢 博小林 伸行坂上 昭男
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1973 年 20 巻 8 号 p. 364-368

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抄録
糖類による芳香成分の保持には,糖の種類,構造とその水素結合が重要であると考え,それらの関連性を検討する目的で5種の糖,6種の芳香成分をモデルとして乾燥後の芳香成分の保持量を測定した。
(1) エステルとアルコール類との間に著しい保持量の差が認められ,芳香成分の保持量はグルコース,マルトース溶液においては芳香成分の相対揮発度に,シュクロース,マルトデキストリン,アラビヤガム溶液では芳香成分の拡散係数と関連性があり,糖類による芳香成分の保持には糖の性質が重要な因子となる。
(2) 5種の糖のうち,マルトース,シュクロースが最も芳香成分の保持量は多く,単糖類,多糖類は少なかった。グルコース,フラクトース間にほとんど保持量の差は認められず,1.6-アンヒドログルコースではきわめて少ない。糖類による芳香成分の保持には,糖の立体構造と水素結合が重要であり,微少領域形成に大きく影響する。
(3) 酪酸エチルーグリセロールの2成分系ではその保持量に大差はなく,アルコール・グリセロールで保持量が10~25%増加する。これを3成分系にすると,エステル6~15%,アルコール20~50%保持量が増加した。これは相互溶解作用あるいは蒸気圧降下による相対揮発度の低下によると思われる。
(4) 糖濃度が高まるとn-プロパノールの保持量は増加し,糖濃度30%から急激に高まり50~60%で最高に達する。芳香成分の保持量と糖ミセルコロイド形成に関連性があることを示唆する。
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