日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
貯蔵青果物の品質変化に関する生化学的研究
(第4報)低温障害バナナ果実の20℃昇温貯蔵に伴うgluconeogenesisとamylolysis
能岡 浄
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ジャーナル オープンアクセス

1975 年 22 巻 1 号 p. 1-6

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抄録
フィリッピン産の緑熟健全バナナ果実を6℃に貯蔵したもの,6℃に9日間置いた後20℃に昇温貯蔵したものおよび20℃に貯蔵した果実(対照区)についてデンプン,還元糖および非還元糖の変化と,見かけのG6Pase,PFKおよび見かけのF1, 6DPase活性の変化を調べて次の結果を得た。
対照区において,4日目までは初めとほとんど変らないが,6日および8日目になるとデンプンが著しく減少し,それに見合うだけの糖の急増が認められ,同時にPFK活性も急増する。また8日目以後還元糖が急増し,見かけのG6Pase活性も8~10日目まで直線的に急増する。10日目以後デンプンはほとんど含まれなくなり,PFK活性は次第に減少するが,見かけのG6Pase活性は急増し,糖はさらに増加する。見かけのF1, 6DPase活性は貯蔵日数とともに少しずつ増加し,10日目には約3倍に急増するが,以後半減する。
6℃に4日間貯蔵した果実は対照区と大差ないが,6日および9日間貯蔵した果実および6℃に9日間置いた後20℃に昇温すると1日および3日目では,デンプンの減少はほとんど認められないが,それ以上に糖,特に非還元糖が増加する。また見かけのG6PaseおよびPFK活性は対照区よりも低いが,見かけのF1, 6DPase活性は著しく高い。
6℃に9日間置いた後20℃に昇温して5日および7日目の果実ではデンプンが急減し,それに見合うような糖の著しい増加が認められ,対照区の6日および8日目と同じような傾向を示す。しかし酵素レベルで対照区の8日目と比較すると,見かけのG6Pase活性は高いが,PFK活性はかなり低い。いっぽう見かけのF1, 6DPase活性は著しく高い。
以上の結果に基づき,糖の代謝経路を考察した。
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