1975 年 22 巻 11 号 p. 549-553
焙煎中のクロロゲン酸類の質的および量的変化を明らかにするために,熱分析曲線の変化とクロロゲン酸類の変化との関係を検討した。
(1) コーヒ豆粉砕物の圧縮成形試料を用いることにより,再現性のある熱分析曲線を得ることができた。
(2) コーヒー豆,そのメタノール抽出物,およびクロロゲン酸の熱分析曲線は類似しており,200℃付近に吸熱があり,それ以上で著しい発熱と重量減が起こる。
(3) 200℃付近の吸熱はクロロゲン酸類からの多数の熱変化物の生成反応に基くもので,熱変化物の一部が焙煎コーヒーに含まれることをTLCクロマトグラフィーで明らかにした。
(4) 200℃以上での急激な発熱と重量減は,コーヒー豆成分の酸化や燃焼によるもので,この段階での褐色色素の急増に平行してクロロゲン酸類が急減することをアンモニア発色法を用いて明らかにした。
(5) 以上の結果から,焙煎中クロロゲン酸類は直接,あるいは多数の熱変化物や他の成分との反応で生成する2次生成物を経て褐色色素に変化するものと推定した。
本実験を行なうに当り熱分析の御指導を頂いた本学部の加藤芳朗教授に感謝する。また御援助を頂いたソントン食品工業株式会社および試料を提供して頂いた(株)トミヤコーヒー店(静岡市)に感謝する。