1976 年 23 巻 2 号 p. 84-89
インライン搾汁機で得た精油および精油構成成分の精製品を添加した温州ミカン果汁とモデル果汁をつくり,色調と濁度に与える影響を調査し,次の結果を得た。
(1) 精油添加量を変えた果汁で,香気の官能検査を行った結果,加熱前の果汁では0.02%添加区が,殺菌後は0.05%添加区がそれぞれ最良と判定された。
(2) 果汁に精油を添加することにより,果汁のL, b値および濁度が増加して, a値が減少し,黄色度が増した。パルプ含量が増えると, L, a, b値および濁度が増え,パルプ含量と色調には密接な関係がみられた。
(3) 精油の蒸留油と残留油を果汁に添加して色調,濁度への影響をみたが,残留油は効果がなく,影響を与える成分は蒸留油にあることがわかった。
(4) 果汁の色調,濁度に影響を与え,明るい黄色を付与する精油構成成分はテルペン系炭化水素のD-limonene,β-Pineneおよび脂肪族アルデヒドのoctanaldecanalであったが,モデル果汁での実験および加熱殺菌の影響を通じて最も効果があったのは精油中に多量含有されるD-limoneneであった。
(5) β-カロチンで着色したモデル果汁で同様の実験を行ったが,ほとんど果汁の場合と同じ結果を得た。